十八話 木っ端天狗と文殊の木2

~  ~ ❀ ~ ❁ ~  ~  ~

 

 ヒラ ヒラ  ヒラ ヒラ

 

青い光を浴びて、蝶が舞い上がります。

 

 ヒラ ヒラ  ヒラ ヒラ

 

人々の前に、二回目の分かれ道が現れました。

 

 ヒラ ヒラ  ヒラ ヒラ

 

右の国へ行くか ・・・? 左の国へ行くか ・・・?

選択を、迫られます。

 

 ヒラ ヒラ  ヒラ ヒラ

 

何も言わず蝶は ・・・じーっと、見守っています。

 

~  ~  ~  ~ ❀ ~  ~

 

 

 

 

 

「二回目は ・・・ ハァ~ ハァ~ ・・・

 左の国を選んだ人々も、右の国を選択したんだよなぁ~ ・・・?」

ヌッキーのしんどそうな、声が聞こえます。

 

「違うわ! 確か、また50人づつに分かれたのよ!」

マチバの元気な声が、答えます。

 

 

 右の道を選んだカタンたち一行は、山道を登りながら

おとうふ山の頂上を目指しています。

 

 

「なぜ ・・・? 右の国が、羨ましく思えて来たんじゃないの?」

ヌッキーの代わりに、足元の方から好奇心旺盛な

シューズのマゼンタが、不思議な顔をして聞き返します。。

 

「風船雲が、現れたんだ!」

先頭を歩いている、カタンが答えます。

 

「風船雲 ・・・?」

 

 

 

 

 

 

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 左の国を選択した人々は ・・・

 

まだ、二回選択する事が出来るので ・・・

 

次は、右の国へ行こうと思っていた人々が、殆どでした。

 

 しかし ・・・

 

 プカ プカ  プカ プカ

 

右の国の空に ・・・ 突然 ・・・

 

 プカ プカ  プカ プカ

 

風船雲が、現れました。

 

 プカ プカ  プカ プカ

 

一つ現れ ・・・ 二つ現れ ・・・

 

 プカ プカ  プカ プカ

 

「あれは、何だ ・・・?」 と思っているうちに ・・・

一つ増え ・・・ 二つ増え ・・・

だんだん だんだん 風船雲が、増えて行きました。

 

 

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「そうそう! 思い出したわ!

  右の国の空が、風船雲だらけになっちったのよ!」

マチバは、針山母さんが面白可笑しく話してくれたのを思い出しました。

 

「それで、右の国へ行くのを迷う人たちが現れたのね!」

シューズのマゼンタが、納得して言いました。

 

「それから、どうなったの ・・・?」

高下駄のアシダが、興味をそそられて、お話の先を聞きます。

 

「へーっ! どんな雲なの ・・・?」

カタンの足元の方からも、雪駄のヌクマルの声が聞こえます。

 

 

「24時間働く機械は、燃料をたくさん食べるんだ。

  しかし、食べるだけじゃなくて 

            排泄(はいせつ)もするんだよ。」

小坊主の梵念が、真面目な顔をして答えました。

 

「排泄 ・・・?」

アシダが、目を丸くして、聞き返します。

 

 

 

 

 

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 24時間働く機械は、一生懸命働くのでたくさん燃料を食べました。

しかし、それと同じくらいお尻から プーと臭いものを出すのでした。

 

 右の国の人々は、鼻を摘まんで逃げながら働かなくてはいけなくなりました。

 

 困った右の国の王様は、それを風船雲の中に漏れない様に、閉じ込めてしまいました。

 

 右の国の空には、一つ また一つと、風船雲が増えて行きました。

 

 そして ・・・

右の国の空は、色とりどりの風船雲でいっぱいになりました。

 

 

 

 

 ある日 ・・・

 

 プカ プカ  プカ プカ

 

その風船雲が ・・・ 一つ ・・・

 

 プカ プカ  プカ プカ

 

左の国の方へ ・・・

 

 プカ プカ  プカ プカ

 

風に乗って流れて来ました。

 

 プカ プカ  プカ プカ

 

 左の国の人々は、流れて来た風船雲に、てんやわんやです。

風船雲を、どう扱っていいのか分かりません。

 

 そこで、畑を耕す鍬(くわ)で、突いてみました。

 

「とぉー! 」

 

すると ・・・ ぱぁーん!

 

 風船雲が、大きな音をたてて破裂しました。

左の国の人々は、余りの大きな音に急いで耳を塞ぎました。

 

 しかし ・・・耳どころでは有りません。

 

ぷ~ん~ ・・・

 

 今まで嗅いだこともないような変な匂が漂って来ました。

苦しくて息も出来ない程です。

急いで鼻も摘まみます。

 

 ゴホ ゴホ  ゴホ ゴホ

 

「何だーっ! この臭いはーっ!」

 

 ゴホ ゴホ  ゴホ ゴホ

 

左の国の人々は、とんだ災難に大騒ぎです。

 

 

 そして、左の国の人々は、畑仕事の他に ・・・

風船雲が飛んで来ないように、風を起こす仕事まで増えてしまいました。

 

 

 

 そんな時 ・・・

 

 ヒラ ヒラ  ヒラ ヒラ

 

美しい青い蝶が、現れ ・・・・

 

 ヒラ ヒラ  ヒラ ヒラ

 

三度目の、分かれ道が現れました。

 

 

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 「あはは ・・・そんなんじゃ、右の国へ行くのは、迷うわね!」

 

急になって来た、山道を登りながら ・・・

 

「右の国の風船雲は、割れないのかなあ ・・・?」

 

「割れたら、大変よ!」

 

みんなで、楽しくお喋りをしていると ・・・

 

 

 

「お~い! お~い!」

と呼ぶ声が、どこかから聞こえて来ます。

 

「お~い! お~い!」

みんなで、キョロキョロ!辺りを見回します。

しかし 、誰もいません。

 

「お~い! ここ! ここ!」

よーく見ると ・・・

 

 鼻だけ、やけに高く、山伏姿の赤い顔をした小さな天狗が、これまた細い小さな木の枝に、ちょこんと座って居ました。

 

 おとうふ山の奥深くに住んでいて、神通力があり、飛行自在と言われている妖怪 ・・・木っ端天狗です。

 

 

「おーっ! 居た居た。」

と言いながら、ヌッキーが顔を近づけると ・・・

 

「待て! 待て! 近づくな ・・・」

と言おうとしたら ・・・

 

ふーん~ 。。。◯

 

「あれ~っ ・・・」

ヌッキーの鼻息だけで、木っ端天狗は飛んで行ってしまいました。

 

「何だーっ! あいつ! ・・・ 軽い奴!」

 

 あははは ・・・

マチバも、カタンも ・・・みんな大笑い ・・・


 でも、直ぐに木の枝に現れて ・・・

 

「これ、これ ・・・ 笑うじゃない ・・・」

木っ端天狗が、汗を拭きながら ・・・

 

「わしゃ ・・・軽いんじゃ ・・・ あははは ・・・

 ところで、これから何処へ行くのかね?」

胸を張って、鼻高々に ・・・

「道案内をしてあげよう!」

と言いました。

 

 

「おとうふ山の頂上まで ・・・」

木っ端天狗に、息が掛からないように ・・・

カタンは、そ~っと言いました。

 

「それは長い道のりじゃーっ! 大変じゃぞー!」

そう言うと、手に持っていた杖を振りながら ・・・

「良い物をあげよう。 ただし ・・・

 わしと、ほらくらべ遊びに勝ったらじゃ!」

 

 

「ほらくらべ遊びーっ!」

みんな、びっくりして大きな声で叫びました。

 

「何? ほらくらべって ・・・?」

マチバが、木っ端天狗に聞きました。

 

「どちらが大きなほらを吹くか、くらべるんじゃーっ!」

そう言い終わると、振った杖の先から青い光に包まれた、四つの小さな物が現れました。

 

 一つ目は、いつでも食べたいものが現れるお椀。

二つ目は、欲しいものが釣れる釣り糸。

三つ目は、なりたいものに変身できる団扇。

そして ・・・四つ目は、姿を隠すことが出来る蓑(みの)が現れました。

 

  

 

 

 

 リーン リリーン  リーン リリーン

 

流れる水の音が響く、剣谷の渓谷に ・・・

 

 リーン リリーン  リーン リリーン

 

美しい音色が、重なります。

 

 リーン リリーン  リーン リリーン

 

日の光が届かない薄暗い深い谷底に ・・・

 

 リーン リリーン  リーン リリーン

 

眩いばかりの、光のリングが現れました。

 

 

「やはり ・・・この辺りでエネルギーを感じるわ ・・・」

光の国の花の妖精リリの声が、聞こえます。

 

「そうね ・・・ 微かに感じるわ ・・・」

そよ風の妖精ココの声も、聞こえます。

 

 二人の上空は、木々の枝が重なり合い

不吉な、薄暗い闇に包まれていました。

  

 逢う魔が時 ・・・

背筋が、ゾクッとするような ・・・

時刻を迎えようとしていました。

 

 

一九話 木っ端天狗と文殊の木3へ ・・・ 続く