三話 ものさし爺さんとお隣の巻尺爺さん

 光の国から遠く離れた不思議な世界の一つに

お裁縫箱の家で暮らす人々の国があります。

 そこの国の人々は、朗らかで明るく優しい性格です。

困った人を手助けするのが大好きです。

 毎日、繕いものを直しに動き回っている働き者です。

 ただ ・・・ 悩み事が少しあるのです。

 それは ・・・

お化けや妖魔が、しょっちゅう遊びに来て悪戯をする事です。

 

 

 「すご~い!」

ココがびっくりまなこで驚いています。

 ココとリリが、トントンするトンカチの音に導かれて行く途中に

不思議な野菜畑がありました。

カボチャも真っ直ぐ、スイカも真っ直ぐ、ナスも ・・・ キュウリも ・・・

トマトも ・・・ 全部真っ直ぐ、なのです。

 「ほんと ・・・!」

リリも信じられない光景にびっくりしています。

 すると ・・・

 

 

 チョク チョク  チョク チョク

どこからか、変な声が聞こえます。

 チョク チョク  チョク チョク

耳を澄まし ・・・ 目を凝らして ・・・ よ~く見ると ・・・

カボチャの葉が微かに揺れています。

 チョク チョク  チョク チョク

声は、その辺りから聞こえてきます。

 チョク チョク  チョク チョク

気づかれないように、そ~っとのぞいて見ました。

 すると ・・・

まだ、産まれたばかりの小さなカボチャの実を

引っ張っている変な者がいました。

 真っ直ぐお化けのチョクチョクです。

チョクチョクが丸い小さな実を引っ張ると ・・・

 あら ・・・あら ・・・あららら ・・・

丸かったカボチャの実が、真っ直ぐに伸びてしまったのです。

 

 ココとリリも、それには ・・・びっくり ・・・!

光の国から外の世界に出たことのない二人にとって ・・・

相当の驚きです。

 光の国の妖精が、闇の国の妖魔に出会う事は

めったにないことなのです。

 ふたりは、気付かれないように、そ~っとカボチャの葉っぱの

陰に隠れました。

 

 

 すると ・・・

野菜畑の向こう側にあるお裁縫箱の家から

元気な声が聞こえてきました。

 ミロロの家のものさし爺さんの声です。

お隣の巻尺爺さんと何か言い争いをしています。

 

 ものさし爺さんは、曲がったことが大嫌い ・・・

何でも真っ直ぐでないと気が済まない頑固者です。

 花壇も ・・・植木も ・・・盆栽も ・・・見事に真っ直ぐです。

畑の形も真っ直ぐなら、採れる野菜も真っ直ぐです。

 だから ・・・

真っ直ぐお化けのチョクチョクは、大喜びではしゃぎ回っています。

 

 

 ものさし爺さんとチョクチョクは、大の仲良しです。

出会いは ・・・

 

 ものさし爺さんがミロロと同じ年頃のころ・・・

 チョクチョクも産まれたての妖魔で、

知識も力もなく、何も分からなかった頃のことです。

 

 いつも通り、丸い実を真っ直ぐに伸ばして遊んでいると ・・・

いつの間にか、ゼンマイ畑にまぎれこんでしまいました。

 真っ直ぐお化けにとって、ゼンマイは天敵です。

大人の真っ直ぐお化けも、ぜんまいの渦巻きには勝てません。

真っ直ぐに出来ないのです。

 それを知らずにチョクチョクは、ゼンマイに手を伸ばしてしまったのです。

ゼンマイの渦巻きの力は強く、絡まってしまい

逃げられなくなってしまったのです。

 困ってバタバタしているところを、若かりしものさし爺さんの真直(ますなが)さんが助けてくれたのです。

 

それ以来、ものさし爺さんとチョクチョクは

信頼し合い仲良しになったのです。

 

 

 一方 ・・・お隣の巻尺爺さんは ・・・

これまた ・・・何でも丸くないと、気の済まない頑固者です。

家の中は、丸い物だらけ・・・

 だから・・・時々、足を滑らして尻餅をついてしまい

お化けたちにクスクス笑われています。

 もちろん、巻尺爺さんの家にも、色々なお化けが

しょっちゅう遊びに来ます。

 その中でも、マルマルお化けのマールは

巻尺爺さんの家が大好き!

かなり長~い間、勝手に住み着いています。

 

 

 だから・・・そんな正反対の二人が会うと

大喧嘩が始まります。

今日の争い事は何かなぁ~?

 

 

 「水たまりは丸いんじゃ~!」

巻尺爺さんが言うと ・・・

 「だまりんしゃ~い!」

ものさし爺さんも言い返します

 

 

 どうやら ・・・昨日降った雨で、出来た水たまりが丸いので

ものさし爺さんが、真っ直ぐに直そうとして揉めている様子 ・・・

   丸いことが大好きなマルマルお化けのマールは ・・・

丸い水たまりに大喜び ・・・

 そして ・・・

ものさし爺さんに引っ張られて、真っ直ぐになったり

巻尺爺さんに引っ張られて、丸くなったり

伸びたり・・・縮んだり・・・大喜びで笑い転げています。

 アハハハ ・・・

遊びに来ていたお化けたちもクスクス笑い転げています。

 アハハハハ・・・

 

 

 笑い声が、お裁縫箱の家の屋根の上まで聞こえて来ます。

勝手に住み着いている、声の妖精ボイスが・・・一言・・・

 

「平和だなぁ~」

 

 真っ直ぐな実を付けた野菜畑に・・・

お化けたちの笑い声が、いつまでも響き渡っていました。

 

 

 

 

        四話 金の果実と火炎魔大王へ ・・・続く ・・・