七話 金の雛が初めて見たものは・・・?(後編)

 ココとリリが、慌ててお裁縫箱の家から出て見ると ・・・

びっくりするような、光景が見えました。

見た事もない姿の、闇の国の妖魔達が

竹竿に吊らされた金の果実の周りを、埋め尽くして居るのです。

 

 

 続いて出てきた、マミムメモ兄弟も

こんなにたくさんの、闇の国の妖魔達を見るのは初めてです。

「まあ~っ」

「わあ~っ」

「おーっ!」

「うひゃーっ」

「すご~い! こんなに大勢、いたのね」

改めて、びっくりしている兄弟です。

 

 ココとリリは、大勢の闇の国の妖魔達に

少し、戸惑います。

しかし ・・・ 気おくれしている暇は、ありません。

竹竿に吊らされた金の果実を、妖しい炎が温めているのが見えたのです。

 

 

「やめて~っ」

ココが、大きな声を出します。

無理だと思っても、魔法の風のウエーブを炎に投げます。

何の反応もありません。

もう一度、投げます。

やはり、何の反応もありません。

 

 

「だめ~っ! 暖めないで!」

リリも、叫びます。

 

 

 そよ風の妖精のココと、花の妖精のリリには、炎を消す力はありません。

増して、闇の国の大王の使い魔のピッピの付けた炎です。

大きな魔力が、働いています。

 

 

 金の果実は、いっそう輝き、振り切れんばかりに

大きく回転しながら、動き回っています。

 

 

 ココとリリが、困っていると ・・・ 突然!

ビューッ! と、冷たい突風が吹きました。

たちまち、闇の炎が消え ・・・代わりに

シューッ! と、辺り一面黒煙が上がり ・・・

全員、煙に包まれてしまいました。

 

 

 ゴホ ゴホ  ゴホ ゴホ

「わあ~っ! 何じゃ~っ。 これは?」

ものさし爺さんが、叫びます。

 チョクチョクも、大慌て ・・・

急いでお爺さんの顔だけ引っ張り、煙の外へ出します。

ものさし爺さんは、ろくろ首状態です。

「あれ~っ」

顔だけ引っ張られて、また、叫びます。

 

 

 ゴホ ゴホ  ゴホ ゴホ

「息が、出来ない ・・・」

巻尺爺さんも、苦しんでいます。

 マールも、慌てて大きく膨らむと

お爺さんの顔にすっぽり ・・・

煙から、お爺さんを守ります。

そして ・・・

ピョンピョン跳ねながら、煙の外へ ・・・

 

 

 ゴホ ゴホ  ゴホ ゴホ

大勢の妖魔たちも、大慌て ・・・

右へ ・・・ 左へ ・・・急いで煙から逃れます。

 

 

 ゴホ ゴホ  ゴホ ゴホ

「目が、痛~い ・・・」

目も口もないのに、せき込んで涙を流している

ノッペの姿もあります。

 

 

 ちゃっかり首を伸ばして、煙の外に顔だけ出している

六べえの姿もあります。

便利な首です。

 

 

「ゴホ ゴホ ・・・ どうして ・・・?」

ココが、せき込みながら心配しています。

「分からない? でも、炎は消えたわ。 ゴホ ゴホ」

リリも、せき込みます。

 

 

 

 

 

 

 

 空中のリングの中から見ていたボイスも、煙から逃れます。

そして ・・・

「あいつは、誰だ ・・・?」

光の妖精では、消せなかった闇の炎を

ビューッ! と、一息で消した者がいたのです。

 

 煙が晴れると ・・・

辺り一面は、真っ黒な煤だらけです。

ものさし爺さんが育てている、真っ直ぐな野菜たちも

全部、真っ黒です。

 光り輝いていた金の果実も、煤で真っ黒です。

それでも、動きは止まりません。

元気いっぱいです。

 

 

 そして ・・・ ついに、その時が来ました。

煤まみれの金の果実が大きく揺れ ・・・

目を覆うばかりの金の光が、辺り一面に光り輝くと ・・・

ポーン と、中から金の卵が、飛び出して来ました。

眩しい限りの輝きです。

 

 しかし ・・・勢い余って ・・・回転しながら ・・・

竹竿の先から、飛んで行ってしまいました。

 

「わあ~っ!! 大変じゃーっ!」

ものさし爺さんの、大きな声がします。

チョクチョクをはじめ、ずーっと見守っていた妖魔たちも大慌て。

「大変だ~っ!」

「追いかけろ~」

ものさし爺さんを先頭に、みんなで追いかけます。

「まて~!」

 

 

 ココとリリも、大慌て ・・・

「捕まえて~」

ココが、叫びます。

「だめーっ! 捕まえては ・・・」

リリも、叫びます。

どっちなの ・・・?

 しかし ・・・

二人の声は、大喚声を上げて金の卵を追いかけている

二人のお爺さんと妖魔たちには、届きませんでした。

 

 

「ココ! 卵は、あの炎に相当暖められているわ」

「そうね! 直ぐに雛が、産まれるわ」

「あの変な姿の人達の、誰かが捕まえたら・・・?」

「大丈夫よ! きっと ・・・雛は、仲間を認識できるのよ」

「そうだと良いけれど・・・? 不安だわ」

「黄金の雛よ! 王様の雛よ! 

 仲間を認識出来ないほど、そんなに間抜けじゃないわ」

「そうよね ・・・!?」

 

 二人は、急いで光のリングを作ると ・・・

金の卵を追いかけます。

 籠の鳥のケットは、お腹に大きな籠を付けた

美しい白い鳥です。

白い大きな翼を広げて、大空を駆け巡るのが大好きです。

自由に ・・・ 誰にも、邪魔されず ・・・

雄大な大空を ・・・ のんびりと ・・・

 

 

 

 しかし ・・・

ここ数百年の間に ・・・

大好きな大空も、変わってきました。

 

 

 コキ コキ  コキ コキ

「お~い! ケット!」

人力飛行機の、ララットが現れ ・・・

 

 

 ブーン ブーン  ブーン ブーン

「オーッス! ケット。 元気?」

ヘリコプターの、リコップが登場し・・・

 

 

 ゴーッ ゴゴーッ  ゴーッ ゴゴーッ

「ケット! のんびりしているなぁ~!」

ジェット飛行機の、コードルが走り抜けて行き ・・・

 

 

 ビューン ビューン  ビューン ビューン

「ヤッホー! ケット!」

ロケットのアーロンが、突然、下から飛び出して来て ・・・

 

 

 ケットにはのんびりと、景色を楽しんでいる暇が少なくなりました。

それでも ・・・ 暇を見つけて、大好きな大空を

雄大に、駆け巡るのが楽しみなのです。  

 

 

「今日は、誰もいないな~。 よしよし ・・・」

と、言うと ・・・ 籠の鳥のケットは心軽やかに、

白い翼をいっぱいに広げ、おとうふ山の上空を、旋回します。

「気持ち良いなぁ~」

すると ・・・

 

 

 ピカ ピカ  ピカ ピカ

遠くの方に、小さな光が見えました。

 

 ピカ ピカ  ピカ ピカ

あれ~? と、思っているうちに ・・・

光が、間近に ・・・

 

 ピカ ピカ  ピカ ピカ

おっ! ・・・ と、思う間もなく ・・・

光が、目の前に ・・・

 

 ピカ ピカ  ピカ ピカ

ドシ~ン!!

逃げる間もなく、ぶつかってしまいました。

 

「あれれ~!」

ケットと光は、おとうふ山の麓にある ・・・

剣谷に、落ちて行きました。

「いててて ・・・!!」

ケットが、お尻を擦りながら ・・・

 

「何だー? 何が起こったんだー?」

ケットは、周りを見渡します。

 

「ここは ・・・? 剣谷だな ・・・」

立ち上がって、飛び立とうとすると ・・・

 

「うわ~っ!」

自分のお腹の籠に、金の卵が入っているのです。

 

「なぜ? 卵が ・・・?」

ケットは、慌てます。

誰も見ていないか、周りを見回します。

 

「俺は、メスだったのか ・・・?」

冷静に、考えます。

 

「違う ・・・ 違う。 俺は、産んでいない」

また、考えます。

 

「さっき ・・・ ぶつかって来た光が、これだったんだ!」

すると ・・・

 

 

 ピカッ パカッ  ピカッ パカッ

金の卵の殻が、割れ始めました。

 

 ピカッ パカッ  ピカッ パカッ

ケットは、大慌て ・・・

「何だ ・・・ 何だ!」

 

 ピカッ パカッ  ピカッ パカッ

中から、金の雛が現れました。

 

 ピカッ パカッ  ピカッ パカッ

金の雛は、殻から顔を出すと ・・・

大きく目を開いて、ケットを見ました。

 

 

 

 八話 ミロロと愉快な仲間達へ  続く ・・・