プロローグⅠ・Ⅱ

     プロローグⅠ   光の卵

 

 遠い遠い遥か彼方の光の国に、光の王様が住んでいる宮殿があります。  

お庭には、王様のとても大切にしている大きな菩提樹が、

光の果実をいっぱい付けて聳えています。  

 周りには見渡す限りお花畑が広がり、光の鳥や,蝶たちが舞い

妖精たちもお花と戯れ、平和で楽しい日々を過ごしています。

 

 ユラ ユラ  ユラ ユラ  

「ココ!もう少しで産まれそうよ」

 ココは光の国に住んでいるそよ風の妖精です。  

 ユラ ユラ  ユラ ユラ  

「わぁ!すごい、光の果実が揺れているわ」

 リリも光の国に住んでいる花の妖精です。  

 

 ココとリリは、女神様から光の果実のお世話係を任され

大張り切りの毎日です。  

光の果実は熟すると光の卵を産みます。  

産まれた卵は妖精たちが、手のひらで大事に暖め

自然に殻が割れるのを待つのです。

 

 

 

 リーン リリーン  リーン リリーン  

「ココ・・・ リリ・・・」     

 遠くの方で声が聞こえます。  

 リーン リリーン  リーン リリーン  

「卵の様子はどうですか・・・?」   

 声が近くで聞えます。  

 

 すると・・・  

空中に光のリングが輝き、中から泉の妖精サーサが現れました。  

光の卵を授かりに来たのです。  

 

「サーサ! 丁度よかったわ、もうすぐ産まれるわ」  

ココが嬉しそうに叫びます。    

「さあ! 手のひらを差し出して」   

リリもサーサを嬉しそうに促します。

 

 ユラ ユラ  ユラ ユラ    

光の果実は揺れています。  

 ユラ ユラ  ユラ ユラ  

だんだん揺れが大きくなり光り輝いています。  

 そして・・・

最後に大きく揺れると、ひときわ光り輝き 暖かい光に包まれて

光の卵が産まれました。  

 サーサは、光の卵を手のひらでそっと包むと大事に胸元で温めます。  

ココとリリも頬を染めてじ~っと様子を見守ります。

 そして・・・  

 

 ピリッ パカ  ピリッ パカ  

光の卵が割れ始めました。  

 ピリッ パカ  ピリッ パカ  

中から小さい光の雛が現れました。

「かわいい!」

ココとリリも大喜びです 。  

 雛は殻から顔を出すと、大きく目を開いてサーサを見ました。  

 すると・・・  

雛が光り輝きサーサと同じ泉の妖精に変身しました。  

光の雛は初めて見たサーサを仲間と認識して変身したのです。  

 

 

 

「ココ、リリ、 ありがとう!」  

サーサは、泉の妖精になった雛を連れて笑顔で帰って行きました。  

 ココとリリは、笑顔で手を振っています。

 

 ニコ  ニコ  ニコ ニコ

周りにはいつの間にか、笑顔の妖精ニニが集まって来ていました。

 ニコ ニコ  ニコ ニコ  

空高くまで聳えている大きな菩提樹のボンボも優しく微笑んでいます。

 

    プロローグⅡ    金の卵

 

 古~い昔からの伝説に、光の国にある大きな光の木には,  

何億年に一度、金の果実が実り、金の卵が産まれるそうです。  

 一万年生きると伝えられている、光の国の妖精たちも

 まだ・・・  

誰も見たことがありません。 

 知っているのは、何億年も前に金の卵から生まれた光の国の王様だけでした。

 

 

 ピカ ピカ  ピカ ピカ  

「ココ! 大変」   

 なぜかリリが慌てています。  

 ピカ ピカ  ピカ ピカ  

「どうしたの? まあ!」  

 ココもびっくりしています。  

 

 ココとリリがお世話をしている王様の菩提樹が、金色に 輝いているのです。  

ココとリリは、  右へ ・・・左へ ・・・大慌て ・・・  

 お花畑で砂や岩に変身して、昆虫たちと遊んでいた大地の妖精プラートも  

心配そうに キョロキョロしています。

 

 

 リーン リリーン  リーン リリーン  

「何を そんなに 慌てているのですか?」 

  美しい声が聞こえて来ました。  

 リーン リリーン  リーン リリーン

 七色に輝く光のリングが現れると、中から美しい女神様が現れました。  

周りには美の妖精ビーナが集まり、七色に輝くオーラが出来ました。  

女神様は嬉しそうに微笑んでいます。 光り輝き眩しい限りの美しさです。  

 

「女神様! ボンボが金色に輝いています」 

 ココがびっくりまなこで叫んでいます。  

女神様はにっこり微笑むと、優しい声で言いました。  

「大丈夫ですよ。 皇子が産まれるのです」  

「えっ! 本当ですか?」  

 リリも、ココよりも大きなびっくりまなこで叫びました。

 

 それからの日々、光の国ではお祭り騒ぎです。  

ボンボの周りには、毎日 金の果実が熟するのを楽しみに

待っている妖精たちでいっぱいです。  

ボンボもウキウキと嬉しそうです。

そんな・・・楽しい日々が続いた ある日 ・・・

 

 ムズ ムズ  ムズ ムズ  

ボンボの様子が変です。  

「どうしたの?」 

  ココが心配して尋ねました。  

 ムズ ムズ  ムズ ムズ  

ボンボがモジモジしています。

「鼻が~ か~ ゆ~ い~」 

  低い声で叫ぶと・・・大きく揺れて仰け反りました。

 そして ・・・  

「ハ ~ッ ク ショ  ~ ン !」 

  光の国中に響く、大きなくしゃみをしました。  

 

 ココがびっくりしてボンボを見上げます。  

花の蜜を集めていた昆虫たちは、ボンボのくしゃみにひっくり返り

てんてこ舞いです。  

 土の中の昆虫たちと遊んでいた大地の妖精プラートも

びっくりして尻餅をついてしまい、お花畑が波打っています。  

 

「お鼻に花粉が入ったのね」

 リリも両手で耳を塞ぎながら、びっくりしてボンボを見上げて言いました。  

 すると ・・・  

空に金色の一筋の線が見えました。 

まだ、 何が起こったのか分かりません。

 遠くの方に金の光が見えます。  

「えっ!」 

  ココが絶句します。

「えっ! 何?」 

  リリはまだ、何が起こったのか分かりません。

 次の瞬間 ・・・

光の国中に、妖精たちの絶叫が響き渡りました ・・・

 

 そして ・・・  

金の果実は一筋の光となり

遠~く 遠~く離れた不思議な世界へ ・・・

真っ直ぐな実のなる

不思議な野菜畑に落ちていきました ・・・

 

 

   一話  針山母さんの雷と布団入道雲へ ・・・ 

                        続く ・・・