二話 指ぬき父さんとお裁縫箱の家

 リーン リリーン  リーン リリーン

朝もやの中、美しい音色が聞こえて来ます。

 リーン リリーン  リーン リリーン

もやが揺れ、光のリングが現れました。

 

「この辺に落ちたはずよ」

そよ風の妖精ココの声がします。

「卵が産まれる前に、見つけないと大変よ」

花の妖精リリの声も聞こえます。

 

 ココとリリは、光の国から飛ばされてしまった

金の果実を探しに来たのです。

 

 

  トン トン  トン トン

どこからか ・・・何かを叩く音がします。

 トン トン  トン トン

ココとリリは、導かれるように ・・・

音が聞こえる方へ向かいました。

 

 

 トン トン  トン トン

朝から トンカチの音が響き渡ります。

 トン トン  トン トン

 勝手に住みついている声の妖精ボイスも

ゆっくり寝ていられません。

 トン トン  トン トン

すると・・・ミロロの大きな声が聞こえます。

「指ぬき父さ~ん! 何してるの~?」

 

 

 ミロロの家は、先祖代々伝わっている

桐のお裁縫箱です。

 継ぎはぎだらけで、見た目は古いけれど ・・・

屋根には、丸に蝶の紋所があって

ちょっと お洒落なのです。

 家族が危険な時に、金の蝶が現れて助けてくれる

守り神伝説が言い伝えられています。

 

 窓は、扇子の形です。

だから ・・・夏は ふわぁふわぁ あおいでくれて

とても涼しいのです。

だけど ・・・ 古いから油断していると ・・・ 大変!

 

 梅雨には、ジメジメお化けのシッケが現れて

妹のモロロとかくれんぼをするのが大好き!

だから ・・・ いつまで経っても洗濯物が乾きません。

 

 一本足のアマモーリは、鬼ごっこが大好きです。

双子の弟ムロロとメロロが、たらいを持って

追いかけても なかなか捕まりません。

だから ・・・家中 ・・・ ビショビショです。

 

 冬には、北風大王の子分のスッキー魔が

小さな穴を見つけて、顔を出すのです。

そして ・・・ ふーっと息を吹き掛けるから

家の中が凍ってしまうのです。

だから ・・・ 朝には ・・・ カチコチ!

 

 でも、安心して ・・・

指ぬき父さんが大工になって ・・・

 

 トン トン  トン トン

ほらね ・・・ 今日も ・・・

 

 トン トン  トン トン

あっと いう間に直してくれます。

 

 古くて継ぎはぎだらけの家だけど ・・・

そんな家がみんな大好き!

 

 

 トン トン  トン トン

「床が抜けそうなんだ~!」

 トン トン  トン トン

 「指ぬき父さ~ん! いつも直してくれて ありがとう!」

「お~っ!」

 

 

 声の妖精ボイスも、トンカチの音に合わせて

トントン跳ねながら ・・・屋根まで来て ほっと しています。

 すると ・・・

どこかで聞いたことのある元気な声が聞こえてきました。

 

 

「えっ~! 何なの~?」

「どうして、全部真っ直ぐなの?」

 

 

     三話  ものさし爺さんとお隣の巻尺爺さんへ ・・・

                                続く ・・・