八話 ミロロと愉快な仲間達1

 お裁縫箱の国に、秋風が吹き始めると ・・・

おとうふ山の木々が、色とりどりに染まり

美しい姿を現します。

 

 

 おとうふ山の麓の里に、刃物一族が暮らしている

忍びの里があります。

別名、剣の里と呼ばれています。

 依頼の仕事に合わせて、刀、 槍、 なぎなた、 斧

のこぎり、 やすり ・・・ など ・・・

何にでも変身して、いつでも人々の役に立つ様に

厳しい修行に励んでいます。

 

 

 

 ミロロの仲間のサミーも、忍びの里に暮らす

修行者の一人です。

日々、鋏を手裏剣のごとく扱える様に頑張っています。

でも ・・・

まだ、未熟者の修行中の身、時々失敗をしてしまいます。

この間も ・・・

 

 

 コーン カーン  コーン カーン

斧に変身して、元気よく薪き割りの練習をしていると・・・

 

 コーン カーン  コーン カーン

始めは、リズム良くいい音が鳴り響きます。

 

 コ~ン カ~ン  コ~ン カ~~ン

あれあれ? だんだん音が乱れてきました。

 

コ~~ン カ~~ン  コ~~~ン カ~~~~ン

だんだん体力が、無くなって来た様です。

 

 重たい斧に変身したサミーは、最後まで体力が持たず

力不足で、途中でバターナイフになってしまいました。

 

「馬鹿者~!」

まさかり頭領の,雷が落ちました。

「バターナイフで、薪が割れるか!!」

 

周りにいた仲間たちに ・・・

お腹を抱えて笑われてしまいました。 

 

 まだまだ ・・・

一人前になるには、時間が掛かりそうです。 

 

 

 

 

 

 

 

 そんな、未熟者のサミーの楽しみは ・・・

おとうふ山の麓にある、剣谷の小川で

カッパーと大好きな水遊びをする事です。

 

 カッパーは、水一族の河童のお化けです。

だから ・・・

サミーは、泳ぎがとても上手です。

幼い頃から、カッパーと遊ぶ内に上手になったのです。

 

 サミーとカッパーは、今日も、泳ぎ疲れて

小川の土手で、寝っ転がって空を見ていました。

 

 すると ・・・

おとうふ山の上空を、籠の鳥のケットが

気持ち良さそうに、旋回しているのが見えました。

 

「空を飛べだら、気持ち良いだろうなぁ~」

サミーが、羨ましそうに言います。

 

「ほんと ・・・」

泳ぐ事が得意なカッパ-も、羨ましそうです。

 すると ・・・

突然、もの凄い速さで、光の矢が現れ ・・・

旋回していたケットを、突き刺したのです

 

「うわぁ~!」

サミーもカッパーも、びっくり!

 

 そして ・・・

ケットが、真っ逆さまに ・・・ 

すごい勢いで、剣谷に落ちて行くのが見えました。

 

 

 心配して走り出そうとした、サミーとカッパーは ・・・

又も、びっくり!!

ケットが落ちて行った渓谷が、一瞬、金色に輝きました。

眩しくて、目を瞬いていると ・・・

黄金の鳳凰が現れ、矢のごとく一瞬のうちに、飛び去って行ったのです。

 

 

 サミーとカッパーは、小川の土手で寸の間の出来事に

ポカ~ン と立ち尽くしています。

 

 

 上空には、何もなかったように ・・・

美しい秋の空と、うろこ雲が、広がっていました。

 

 秋の気配は、真っ直ぐな実のなる野菜畑と ・・・

お裁縫箱の家にも、漂い始めています。

 

 

「ミロロ~! 朝ご飯よ~!」

「は~い!」

朝から元気な、針山母さんの声が聞こえます。

 

 ミロロの家の朝食は ・・・

白いご飯と卵焼き。

お味噌汁と真っ直ぐ畑で採れるキュウリのお漬物 ・・・

そして ・・・お茶。

毎日、同じメニューだけど ・・・

針山母さんの作るご飯は、とっても美味しいから

みんな大好き!

 

 だけど ・・・

双子の弟のムロロとメロロは、まだ小さいから

食べても、食べてもご飯が減りません。

小さい妹のモロロも、熱くて ・・・

お味噌汁が、なかなか飲めません。

ふーふーして、飲もうとすると・・・

 

 ユラ ユラ  ユラ ユラ

お椀の中の湯気が、揺れ始めました。

 ユラ ユラ  ユラ ユラ

右へゆらゆら ・・・左へゆらゆら ・・・

 ユラ ユラ  ユラ ユラ

それに釣られて ・・・モロロの眼も

右へゆらゆら ・・・左へゆらゆら ・・・

 ユラ ユラ  ユラ ユラ

「美味しそう~。 食べちゃうぞ~!」

食いしん坊お化けのユーゲが、現れました。

さあ~、大変!

みんなのご飯が、食べられてしまいます。

 

 

 秋になると現れる、食欲旺盛なお化けです。

食いしん坊お化けのユーゲは ・・・

何でも食べてしまいます。

 

 ムロロが、慌ててご飯を食べます。

メロロも、必死にご飯を飲み込みます。

でも ・・・ユーゲの勢いは、止まりません。

 

 マロロも、ふうふうしながら頑張ります。

しかし・・・すごい勢いで、食べつくしています。

このままでは、全部ユーゲに食べられてしまいます。

 

 ☆ パコ~ン!!

 

 針山母さんが、大急ぎでお碗に蓋をしました。

突然、閉じ込められてしまったユーゲは ・・・

お碗の中で、バタバタ ・・・

そして ・・・

あとかたもなく、退散してしまいました。

あ~良かった!

これで、安心です。

 

「早くしないと、学校に遅れるわよ!」

「は~い!」

とっても、頼もしい針山母さんです。

後片付けをしながら ・・・

「ものさし爺さん ・・・いつ帰ってくるのかしら?」

 

 金の卵を追いかけて行ったまま ・・・

ものさし爺さんとチョクチョクは ・・・

まだ ・・・帰って来ていないのです。

 

 

 九話 おとうふ山の怪奇 へ 続く・・・