光の山の白ひげ爺さんの秘密

 美しい光の国に ・・・

蜃気楼の悪戯と呼ばれている幻の山があります。

どこに現れるのか? いつ現れるのか?

全く、予想がつかないのです。

 

 その山には ・・・

光の泉があり、その水を飲むと ・・・

どんな病も治る、不老長寿の言い伝えがあります。

そして、光の木の実を食べると ・・・

どんな願い事も叶うと言われています。

だから ・・・

不の心を持つ者に、悪用されない様に

存在を、蜃気楼の様にぼやかしていると

伝えられています。

 

 その山が現れると、光の国の澄み切った青空に ・・・

滅多に見かけない、フワフワの綿菓子の様な雲が、

プカプカ浮かび、あちこち動き回ると伝えられています。

光の国の妖精達も、その雲を見た事がある者は少ないと言われています。

 初めてのクリスマスを迎える ・・・

花の妖精のリリは、落ち込んでいました。

自分のサンタの種だけ、芽が出ないのです。

相変わらず、植木鉢の中で ・・・

 グー スー  グー スー 

サンタの種は、気持ち良さそうに寝ています。

 

「ふーっ!」

大きなため息をつきます。

そして ・・・

お花畑の真ん中に寝っころがって、お空を見ていました。

周りで、お花の蜜を集めていた昆虫達も、心配しています。

 すると ・・・

 フワ フワ  フワ フワ

青い空に、白い物が浮かんでいます。

 フワ フワ  フワ フワ

青空しか見た事のないリリは、 びっくり!

 フワ フワ  フワ フワ

おまけに ・・・

その白いフワフワが、近づいて来ました。

 フワ フワ  フワ フワ

「うわーっ! 何 ・・・?」

リリは、驚きのあまり動けずにいました。

昆虫達も、びっくり!

花の蜜を集めるのをやめて、見つめています。

 

 

 白いフワフワは、リリの目の前まで来ると ・・・

左右に手が出て ・・・ 下から足が伸び ・・・

最後に上から、赤い三角帽子が現れました。

そして ・・・白いフワフワの間から、綺麗な目をパチパチさせています。

「ア ア ア ・・・」

リリは、驚きのあまり、声も出ません。

「花の妖精かな ・・・?」

白いフワフワは、優しい声で尋ねました。

植木鉢のサンタの種を見て ・・・

「ため息の理由は、これかな ・・・?」

 


「どうして分かるの ・・・?」

優しい声に安心して、リリは、答えます。

「ため息が、呼びに来たんだ。」

「えーっ!」

リリは、おおきな声を出します。

 


「さっき、大きなため息をしてなかったかな ・・・?」

「してたわ! わたしの育てているサンタの種だけ、芽が出ないの。」

「う~ん! これは ・・・

  しっかり女神様の話を聞いていなかったのかな ・・・?」

そう言うと、白いフワフワは ・・・

リリのサンタの種を、指先でなでました。

「これで、大丈夫!」

白いフワフワは、リリの方を向いて微笑みました。

 


「誰なの ・・・?」

りりは ・・・不思議に思いました。

白いフワフワは、歳をとったお爺さんと思っていたのです。

しかし ・・・

今、サンタの種をなでた手は ・・・

しわのない光り輝くような美しい手だったのです。

 


「お爺さん ・・・? それとも、お兄さん ・・・?」


「フフフ ・・・年寄りに見えるかな?

 それとも ・・・ 若く見えるかな?」


白いフワフワは、素敵な笑顔残して ・・・

光の国の美しい ・・・澄み切った青い空へ戻って行きました。

 

 リリ ・・・ リリ ・・・

どこか、遠くで声がします。


 リリ ・・・ リリ ・・・

誰かが、呼んでいます。


 リリ ・・・ リリ ・・・

「う~ん ・・・ 誰 ・・・?」


「リリ!!」

そよ風のココの、声です。


「リリ! 大丈夫 ・・・?」

目の前に、心配しているココの顔があります。 

 

「どうしたの? うたた寝なんかして ・・・」

近くを通りかかったココが、寝て居るリリを心配して、起こしたのです。


「あれ ・・・? 白いフワフワは ・・・?」

辺りを、キョロキョロします。

しかし ・・・どこにも居ません。

空は、澄み切った青空です。


「何、寝ぼけているの! それより見て!」

 

「わーっ!!! 芽が出てる!!」

目を覚ましたら ・・・

赤い三角のサンタの種が、赤い小さな芽を出したのです。

みんなより、一週間遅かったけれど ・・・

でも、二人は大喜びです。

周りにいた昆虫達も、飛び跳ねて喜んでいます。

 それからの日々 ・・・

 

 スク スク  スク スク

サンタの芽は、順調に伸び ・・・

 

 スク スク  スク スク

毎日、大きくなって行きます。

 

 スク スク  スク スク

リリは、大張りきりで、お世話をしています。

とても楽しそうです。


 スク スク  スク スク

そして ・・・

ついに芽の先から二枚の葉が開き、二葉になったのです。

 

「ヤッター!」

飛び跳ねて、喜びます。

周りに居た昆虫達も、大はしゃぎ ・・・


まだ、寝て居た大地の妖精のプラートも、

びっくりして目を覚まし、何事かと ・・・

辺りを、キョロキョロしています。

 

リリは、嬉しくてスキップをして ・・・

そよ風の妖精のココに、知らせに行きました。

 

 

 

 

 誰も ・・・いなくなったお花畑に ・・・

 

 ヨイショ  コラショ

どこかで、音がします。

 

 ヨイショ  コラショ

何かを、抜いている様子です。

 

 ヨイショ  コラショ  ドッコイショ

「あ~ ・・・疲れた~・・・フウ~ ・・・」

何か ・・・? 変な声も聞こえます。


 チョコ チョコ チョコ チョコ ・・・・

足音が ・・・ 遠ざかって行きます。

 

 そして ・・・

お花畑が、静かになりました。

 

 しばらくすると ・・・

リリが、しょんぼりして帰って来ました。

一緒に喜びたかったのに ・・・ココは、居ませんでした。

また、無風の国へお手伝いに行って留守だったのです。

 

 そして ・・・

植木鉢を見ると ・・・


「うわーっ!!!」

やっと育った、二葉が消えていました。

リリは、大慌て ・・・あちこち探します。

どこにも居ません。

どこへ ・・・行ったの ・・・?

リリは、悲しい気持ちになりました。

 夢だったのか ・・・

現実だったのか ・・・

白いフワフワの言葉が、頭の中に響きます。

 

「女神様の話を聞いていなかったのかな ・・・?」

女神様の美しい顔が浮かびます。

 

 

 * 二つ ・・・ 二葉になって、根がしっかり育ってくると、

        歩き回るので、目を離さない様に気をつけましょう。

 

 

 女神様のお話を、聞いていなかったリリは ・・・

何で ・・・二葉が消えてしまったのか分かりませんでした。

 

 

 リリは、歩きだした二葉を見つける事が出来るのでしょうか ・・・?

 

 

 三話 トナカイの仕事とブラックサンタの誘惑 へ ・・・続く