トナカイの仕事とブラックサンタの誘惑

 幻と呼ばれる光の山に ・・・

二股に分かれた枝の茂る、美しい木があります。

 

 その枝の間に、花が咲き ・・・

赤い果実が成熟すると、年に一度 ・・・

光の山が、赤く輝き黄金色に染まります。

 

 

 ユラ ユラ  ユラ ユラ

赤い果実が、揺れます。

 ユラ ユラ  ユラ ユラ

そして ・・・光始めます。

 

 ピカ ピカ  ピカ ピカ

二股に分かれた枝と一緒に ・・・

 ピカ ピカ  ピカ ピカ

ポトン! と、落ちます。

 

 

 しかし ・・・

地に落ちる少し手前で止まります。

赤い光が辺り一面に輝き ・・・

金色の角を持つ赤いお鼻のトナカイさんに変身するのです。

 

 

 次から次へと ・・・

赤い果実が落下して、赤い光が輝きます。

そして ・・・

沢山の立派な角を持つ、トナカイが誕生します。

 

 

 この時に ・・・

幻の光の山が、黄金色に染まるのです。

普段、存在をぼやかしている光の山の ・・・

唯一の欠点です。

 ピカ ピカ  ピカ ピカ

黄金色の光は ・・・

 

 ピカ ピカ  ピカ ピカ

遥か彼方まで届きます。

 

 ピカ ピカ  ピカ ピカ

誰もが ・・・ 目を奪われ ・・・


 ピカ ピカ  ピカ ピカ

美しさに ・・・惑わされます。

 

 

 

「フフフ ・・・」

何処からか ・・・

不気味な声が聞こえて来ます。


「そろそろ ・・・蕾が膨らみ始めたかな ・・・フフフ」

低い暗い声が ・・・


「開いてしまうと、近づけなくなるからな ・・・フフフ」

暗黒の夜空に響きます。


 

 ピカ ピカ  ピカ ピカ

トナカイの、赤い鼻が光ります。

 

 ピカ ピカ  ピカ ピカ

すると ・・・ 空中に、赤いリングが現れます。

 

 ピカ ピカ  ピカ ピカ

そして ・・・ 次々と ・・・


 ピカ ピカ  ピカ ピカ

リングの中に、消えて行きます。

 

 光の国のトナカイは、産まれて間もなく ・・・

光の山から、旅立ちます。

そして ・・・世界中を大掃除します。

 

 フラワーサンタは ・・・

とても繊細で、清らかな心を持つ ・・・

デリケートで可愛らしい花だと言われています。

だから ・・・

世界中を飛び回って、不要の物や自然に戻らない

ゴミを食べて、綺麗にするのです。

そして ・・・

フラワーサンタが、無事に ・・・

満開の花を咲かせるお手伝いをするのです。

 

 

 トナカイは、フラワーサンタのナイトです。

フラワーサンタが、世界中に ・・・

光の花を咲かせるまで守り抜きます。

 

 

 

 

 トナカイのレインは ・・・

立派な角を持ち、手足が長く

美しい毛並みをなびかせ、凛々しい姿をしています。

夜空を駆け巡る姿は、雄大で可憐で ・・・

ため息が出てしまうほどの雄姿です。

 

 毎日、世界中を飛び回り

一生懸命、真面目にお掃除に励んでいます。

フラワーサンタの蕾の精が現れるまで ・・・

 

 

 ピカ ピカ  ピカ ピカ

赤いリングが現れます。

 

 ピカ ピカ  ピカ ピカ

「レイン ・・・先に行くね。」


仲間のトナカイが、現れました。

迎えに来た蕾の精と一緒に、フラワーサンタを迎えに行くのです。

 

「気をつけて ・・・」

仲間を、笑顔で送ります。

レインも、少しウキウキしています。

フラワーサンタの蕾の精が、現れ始めたからです。

 

 次々と ・・・

薄い桃色をした蕾の精が、トナカイを迎えに来ます。

「可愛いいな~」

レインも、楽しみに待っています。

 

 一日が過ぎ ・・・

今日は、迎えが来るかな ・・・?

 

 二日が過ぎ ・・・

今日こそは ・・・来るだろう ・・・??

 

 三日が過ぎ ・・・

仲間のトナカイは ・・・誰もいなくなりました。

 

「なぜ ・・・ 来ない ・・・???」

 

 

 

 

 

 

 

おーい! リリ!」

ボンボの、低くて大きな声が響きます。

 

 ボンボは、王様がとても大切にしている

光の国の大きな、大きな菩提樹です。

 

「もう ・・・目が回りそうだーっ!」

大きな木が、ユラユラ揺れます。

 

 リリは、いなくなってしまった二葉を

あちこち探しました。

しかし ・・・何処にも居ません。

だから、背の高いボンボに協力して貰い ・・・

頭の上から、二葉を探していたのです。

 

「あっ! 居たわ!」

と、言って光のリングを作って飛び出して行きます。

 

 光の国の妖精は、光のリングを通って瞬時に移動します。

 

 そして ・・・

見つからず、しょんぼりして帰って来ます。

それが ・・・ずーっと続いているのです。

 

 だから ・・・ボンボの周りは、

光のリングで、ピカピカ賑やかなのです。

 ソヨ ソヨ  ソヨ ソヨ

何処かから、風が吹いて来ます。

 

 ソヨ ソヨ  ソヨ ソヨ

そよ風 ・・・? ココ ・・・?

 

 ソヨ ソヨ  ソヨ ソヨ

違います。ココのそよ風とは違います。

 

 ソヨ ソヨ  ソヨ ソヨ

今まで感じた事のない風です。

 

 リリは、背筋が ゾク!としました。

しかし ・・・

周りには、誰の気配も感じません。


 すると ・・・

 ピコ ピコ  ピコ ピコ

遠くの方の、お花畑で ・・・

 

 ピコ ピコ  ピコ ピコ

赤い二枚の葉っぱが ・・・


 ピコ ピコ  ピコ ピコ

浮いたり ・・・ 沈んだり ・・・


 ピコ ピコ  ピコ ピコ

「あーっ! 居た―!」

リリは、大きな声で叫びます。

「ボンボ、ありがとう! やっと見つけたわ」

リリが、急いで立ち去ろうとすると ・・・

 

「リリ! 風の匂いが変わった ・・・」

ボンボが、低い声で言います。


「えっ! どういう事 ・・・?」

 

「気を付けなさい。 ・・・あいつは、必ず現れる・・・」


「あいつ ・・・?」

まだ ・・・

経験の少ないリリは、誰の事か分かりませんでした。


「ブラックサンタと ・・・ その手下達 ・・・だよ・・・」

 

 ブラックサンタは ・・・

フラワーサンタの蕾が膨らみ始め、薄い桃色になる頃に

必ず現れます。

自分の手下達を使って、純粋な蕾を誘惑します。

 

フラワーサンタの蕾は、純真無垢なので・ ・・・

人を疑う事を知りません。

だから ・・・

言われたままに、信じてしまうのです。

そこを、ブラックサンタと手下達が狙うのです。

 

 花の妖精は、それを必死で阻止します。

フラワーサンタの蕾が、開花するまで ・・・

 

 満開になったフラワーサンタは、無敵です。

不の心を持った者は、近寄る事も出来ません。

だから ・・・

蕾の間に、ブラックサンタの種を植え付けようと

あれや ・・・これや ・・・と、誘惑してくるのです。

 

 赤い二葉になったばかりの、サンタの種は ・・・

自由に動き回れる様になったのが嬉しくて ・・・

リリから、捕まらない様に逃げ回っています。

 

 

「りり! こっち! こっち!」

枝いっぱいに、筒状に小花を付けた ・・・

ジャノメエリカが、ピーピーと筒の笛を吹いて教えてくれます。

 

「あっ! こっちに来たわ!」

可憐な姿の、つり鐘状に小花を付けた ・・・

スズランエリカも、リンリンと鈴の音を鳴らしてくれます。

 

 お花畑の花達が応援してくれます。

しかし ・・・

なかなか、すばしっこくて捕まりません。

 

「フラワーサンタは、可憐で清らかで ・・・

 お淑やかじゃなかったの ・・・?」

リリは、追いかけながら叫びます。

 

「育ての親に似るって言うからーっ!」

生意気な返事が、帰って来ます。

 

 

「もー! 頭に来たーっ!」

リリは、 真っ赤になって追いかけます。

 

 でも ・・追いかけても、追いかけても捕まりません。

周りに居るお花や昆虫達も、ハラハラ ドキドキ ・・・

お花畑中、大騒ぎです。

 グー スー  グー スー

生意気な、サンタの種から育った二葉も ・・・

 グー スー  グー スー

疲れて、リリの背中で寝ています。

 

 

 長い白い毛が糸状に伸び、煙の様に見えていた

スモークツリーに絡まって ・・・

やっと捕まえる事が出来たのです。

 

 

 グー スー  グー スー

背中で、無邪気に寝息を立てている二葉を ・・・

リリは、可愛いなと、思いました。

起きてるときは、生意気だけど ・・・

 

 そして ・・・

ボンボの言ってた言葉が、頭を過ぎります。

「あいつは ・・・ 必ず現れる ・・・」

経験の浅いリリは ・・・

ブラックサンタの事は、余り良く知りませんでした。

しかし ・・・

「しっかり、育てなくっちゃ ・・・」

と、決心を固めるリリでした。


 

 ❁ 三つ ・・・ クリスマスイブを過ぎても ・・・

     花が開花しないと、枯れてしまうので気を付けましょう。

 りりは、ブラックサンタの魔の手から ・・・

フラワーサンタを守る事が出来るのでしょうか ・・・?

 

 そして ・・・クリスマスイブまでに ・・・

花を咲かせる事が出きるのでしょうか ・・・?

 

 

四話 走れ!太っちょトナカイ ・・・花の流星に乗って ・・・☆

                    前編へ 続く ・・・