❆フラワーサンタと太っちょトナカイ❆

 一話 サンタの種と花の妖精

 遠い遠い遥か彼方の光の国に、光の妖精たちが住んでいる美しい国があります。

光の妖精は、光の卵から産まれます。

光の卵は、王様の大事にしている菩提樹のボンボが実を付ける、光の果実から産まれるのです。

 

 花の妖精のリリは、少し前に光の卵から産まれたばかりの幼い妖精です。

同じ花の妖精達の真似をして、毎日お花のお世話をして楽しく暮らしています。

しかし ・・・

まだ、なれない仕事だから失敗ばかりです。

お花畑に暮らしている昆虫達も、ハラハラしながらも優しく見守ってくれています。

 

 光の国のお花畑には、世界中のありとあらゆるお花が咲いています。

そのお花をお世話するのが、花の妖精たちの仕事です。

「リリ! リリ!」

元気の良いローズの声が、お花畑から聞こえて来ます。

ローズは、花の妖精の仲間です。

リリよりも、少し先に産まれたお姉さんです。

 

「は~い。どうしたの ? 慌てて ・・・」

周りを見ると ・・・

みんな、いつもよりもソワソワしています。

 

「もうじき女神様が、サンタの種を持って現れるの」

「サンタの種 ・・・?」

 

 

 

 

 12月に入ると ・・・

花の妖精達は、1年で一番大事な時を迎えます。

女神様から貰うサンタの種を、必ず育てて花を咲かせなければ成らないのです。

 

 好奇心旺盛なリリは、初めて見るサンタの種に、

少しドキドキ ・・・たくさんワクワク ・・・しています。

 

 

 リーン リリーン  リーン リリーン

美しい音色と七色の光のリングが現れ、女神様の美しい声が聞こえて来ます。


 リーン リリーン  リーン リリーン

「いいですか? 良く聞いて下さい。失敗は、許されまさん。

 とても大切な事ですから ・・・ 」

 

 

 リリは、女神様から貰った、サンタの種に目がくぎ付けです。

女神様の声は、もう頭の中には入って来ません。


 初めて見るサンタの種は、赤い色をした三角形の小さな種です。

その種をそーっと手のひらに乗せ、震える指先でなぜました。

すると ・・・

不思議な事が起こりました。

三角の形の小さな種が、膨らんだり ・・・ へこんだり ・・・

そして ・・・ 耳を澄ますと ・・・

 

 グー スー  グー スー

種が、寝息を立てているのです。

 グー スー  グー スー

ぐっすり 寝ているのです。





 


 一年間、乾燥状態あったサンタの種は、

花の妖精に 触れられた途端に、命の光を灯始めたのです。

 

 

 遠くの方で、女神様の美しい声が聞こえて来ます。

「良いですか ・・・ 今から大切な事を ・・・三つ言います。

 良く聞いて ・・・ 下さい ・・・ 」

 

 しかし ・・・

リリは、もう ・・・うわの空です。

サンタの種に夢中です。

女神様が、とても大切な話をしているのに ・・・


 数日後 ・・・

 

「リリ! 何してるの ?」

そこへ ・・・

そよ風の妖精のココが、通りかかりました。

 

 

 ココは、リリと同じ頃 ・・・ 

光の卵から産まれた仲間です。

リリは、 花の妖精のガーナが迎えに来てくれて ・・・

花の妖精になりました。

ココは、そよ風の妖精のソソが迎えに来てくれて ・・・

そよ風の妖精になりました。

光の卵から産まれた光の雛は、初めて見たものを仲間と認識して変身するのです。

「ココ! 見て。 種が、寝ているの! とっても可愛いの 」

リリが、嬉しそうに言います。


「えっ! 種が、寝るの?」

ココは、びっくりして、リリの植木鉢を覗きます。

そして ・・・ 耳を澄まします。

 

 グー スー  グー スー

「わぁーっ! 寝息を立てているわ 」

 

 グー スー  グー スー

「良く寝ているわ。 わーっ! あくびも、してる。」

ココも、初めて見る種の可愛い寝顔に夢中です。


「何の種なの ・・・?」


「サンタの種よ。知ってる ・・・?」

ココは、首を横に振ります。

 

 

 まだ、経験の少ない幼いココとリリには、サンタの種の意味が分かっていませんでした。


 

 

 

「ココ!」

ソソが、呼んでいます。


「どこかに出かけるの ・・・?」

リリが、尋ねます。


「今から、無風の国へ行くの 」


「無風の国 ・・・?」


「風がないから、胞子が遠くへ行かないの。

 少しお手伝いに行ってくるわ!」

ココは、元気よく出かけて行きました。

 

 それからの日々 ・・・

リリは、付っきりでサンタの種のお世話をしています。

しかし ・・・

種は、ずーっと寝ていて何の反応もありません。

 

 

 一週間がたったある日 ・・・

 仲間の花の妖精達が、嬉しそうに喜んでいます。

リリは、気になって見に行きました。

すると ・・・

ローズの植木鉢の中のサンタの種から、芽が出ていたのです。


「これで、安心だわ。」

ローズは、大喜びです。

他の仲間達も、サンタの種の芽が出て来て喜んでいます。

 

 

 リリは、自分のお花畑に戻ると ・・・

グー スー  グー スー

寝ているだけのサンタの種が、心配になって来ました。


 リリは、初めて見たサンタの種が可愛くて夢中になり ・・・

女神様の大切なお話を聞いていなかったのです。

 

 ✿ 一つ  種が寝ていても、お口を開けて

        三時間ごとに、お水をあたえて下さい。

 

 

 光の国は、雨が降りません。

光の国の広大な花園に水を蒔くのは、泉の妖精の仕事なのです。

だから ・・・

 リリは、種がずーっと寝ているので、

一週間お水を与えていなかったのです.



 

 リリのサンタの種は、お花を咲かせる事が出来るのでしょうか ?

 

 

  二話 光の山の白ひげ爺さんの秘密 へ ・・・続く