パールスノーの伝説

~*~*~*~*~*~*~*~*~*~*~*~*~*~

 

 

 赤い炎で海が燃える時 ・・・

 

白い真珠の花が流す ・・・

 

氷の涙が解けるのを知っていますか?

 

 熱く狂った赤い炎が ・・・

 

輝く光を求め ・・・

 

泉のように溢れだすことを ・・・

  

 抑えても消えない ・・・

 

赤い炎を持て余して ・・・

 

無常の風が吹き荒れることを ・・・

 

 

 

 

~*~*~*~*~*~*~*~*~*~*~*~*~*~ 

 

四話 輝く光の海の魔法

(氷の涙が解ける時)

 ラララ ・・・

歌声とともに ・・・

 

 ラララ ・・・

赤く燃えた夕日が ・・・

 

 ラララ ・・・

静かに水平線に沈んでいきます。

 

 ラララ ・・・

赤い炎の情熱を抑えるように ・・・

 

 ラララ ・・・

 

 

 

 

 

めったに驚かないスッキー魔が ・・・

冷や汗で、びっしょりです。

 

「もうーっ! 驚かすなよーっ!」

 

海に怒鳴りながら、ほっとして砂浜に腰を下ろします。

 

そして ・・・

手の中の、美しい宝玉を見つめます。

光の国の声の妖精ボイスが投げてくれた魅惑の宝玉です。

 

「ほんとに綺麗だな ・・・吸い込まれそうだ ・・・」

 

 

すると ・・・

ほっとしたのも、つかの間 ・・・ 

 

 ズズ ズズズ  ズズ ズズズ

波の音に交って変な音が聞こえてきます。

 

 ズズ ズズズ  ズズ ズズズ

スッキー魔は、また緊張します。

 

 ズズ ズズズ  ズズ ズズズ

目の前の砂の中から聞こえてきます。

 

 ズズ ズズズ  ズズ ズズズ

砂が盛り上がりながら、不気味な音が近づいてきます。

 

 ズズ ズズズ  ズズ ズズズ

緊張のあまり、息をするのも忘れて、見つめます。

 

すると突然 ・・・

ピョコンと ・・・

大きな目玉が、砂の中から飛び出てきました。

 

「うわーっ!」

スッキー魔は、驚いて飛び退くと

そのまま後ろへ、ひっくり返ってしまいました。

砂まみれになって驚いているスッキー魔に ・・・

 

「驚かしてしまったかな! ホッホッホッ・・・」

と、目玉が話かけてきました。

そして、砂の中から長く伸ばした頭を振りながら

金茶色の亀甲模様が自慢の、亀のロッパが現れました。

 

 

「もうーっ! 驚かすなよーっ!」

砂を払いながら、ロッパを見て少しほっとしているスッキー魔が怒鳴ります。

 

「すまん! すまん! ホッホッホッ ・・・」

ロッパが陽気に笑います。

そして ・・・

「ちと、気になることがあってな!」

と、言いました。

 

 

 

 

~  ~  ~  ~  ~ ◯ ~  ~ ◯ ~  ~

 

 

 

 

 

 ユラ ユラ  ユラ ユラ

 

明るい光が海の中に注がれます。

 

 ユラ ユラ  ユラ ユラ

 

波間に揺られて、光がオーロラのように海の中で靡(なび)きます。

 

 ユラ ユラ  ユラ ユラ

 

珊瑚礁のお花畑も ・・・

 

 ユラ ユラ  ユラ ユラ

 

光のオーロラを浴びて七色に染められ光り輝いています。

 

 

その美しい光景の中を ・・・

地下足袋魚になったシュンソクが、キョロキョロしながら泳いでいきます。

 

ピンクのお目々が可愛いハゼのゼナと一緒に、尾びれを揺らして上手に泳いでいきます。

 

その少し離れた後ろから ・・・

クマノミのチークが見つからないように、そーっと後をつけていきます。

 

 

「あなた、ほんとに泳ぐの上手ね!」

ゼナが、感心して声をかけます。

 

「小さいころから、カッパーと一緒に泳いでいたから」

シュンソクが何かを見つけて、急ぎながら答えます。

 

「カッパー? お友達?」

ゼナも後を追います。

 

「うん! とっても頼りになる奴なんだ!」

シュンソクが、ある珊瑚礁のお花畑のところで止ります。

 

「じゃあ、今度紹介してね!」

ゼナも止ります。

 

「うん! それより、これは ・・・?」

シュンソクが、あるものを見て驚いて聞きます。

 

「ふふふ ・・・あなたが捜している鋏の少年の作品よ!」

ゼナが可笑しそうに言います。

 

 

シュンソクの目の前には ・・・

綺麗にカットされた、色々な形の珊瑚礁の盆栽イソギンチャクが広がっていました。

 

 

 

 

 ~  ~ ☆ ~  ~  ~ ☆ ~  ~  ~  ~

 

 

 

 

 

 

夕日が沈み七色の砂浜は ・・・

静かな黄昏時を迎えています。

 

 

「何だよ! 気になることって ・・・?」

スッキー魔が、亀のロッパに聞きます。

 

「海が、ざわついている ・・・」

ロッパが、長~い首を自慢の金茶色の亀甲模様の甲羅にしまいながら言います。

 

「はあ~? どういうこと ・・・?」

 

「不吉な予感がする ・・・」

ロッパの大きな目玉が、スッキー魔の持っている宝玉を見ます。

 

「これ ・・・?」

吸い込まれてしまいそうな、魅惑の宝玉が薄暗くなってきた空間に妖しく浮かび上がります。

 

「どうやって、手に入れたのかね ・・・?

 その恐ろしい光玉に、またお目にかかるとは ・・・」

大きな目玉を閉じながら・・・

長~い間生きてきたロッパは、思い出すように言いました。

  

「恐ろしい ・・・?」

 

「そう・・・誰もが虜(とりこ)になる!

  あれは、いつだったか・・・一番最初に・・・出会ったのは・・・」

 

 

 

 

    ~~~~~*~~~~~*~~~~~*~~~~~~

 

 

 

 

 

 

 

昔々・・・

おとうふ山から見える南の海の七色の砂浜が ・・・

まだ、白い砂浜だった頃 ・・・

 

山祇(やまつみ)の男神様と綿津見(わたつみ)の女神様の間に

三人の男の子が授かりました。

 

三人の男の子は、生まれながらに神秘な力がありました。

 

一人は、風を操る力。

もう一人は、火を操る力。

そして、最後の一人は、水を操る力でした。

 

三人は、綿津見の女神様に見守られながら、すくすくと育ち、ぐんぐん大きくなっていきました。

とても仲が良く白い砂浜で、いつも一緒に遊んでいました。

 

亀のロッパは、平和な一時を微笑ましく見つめ、穏やかに暮らしていました。

 

ある時 ・・・

三人は、白い砂浜で不思議な少女に出会いました。

蜃気楼のように透明で色のない少女でした。

 

 

少女は、緑と赤と青の光玉を失くしてしまい捜していました。

自分が透明なのは、色の光玉を落としてしまったからと言いました。

 

三人は、少女の探している三色の光玉を捜してあげることにしました。

 

 

風を操る力を持つ男の子は ・・・

じーっと耳を澄まし世界中を吹き抜ける風の声を聞きます。

そして、緑の光玉が ・・・

吐く息も体中の血液も凍る、氷の国にあるのを突きとめました。

 

風を操る男の子は、大きな旋風(つむじかぜ)を作ると

猛吹雪の氷原も聳え立つ氷河も越えて、氷の国へ一っ跳び!

キラキラと輝く雪の結晶の中に、緑の光玉を見つけます。

しかし、目の前にあるのに、摑むことができませんでした。

何年たっても、男の子は戻って来ることはありませんでした。 

 

 

 

 

 

火を操る力を持つ男の子は ・・・

小さな種火を世界中に飛ばし、光玉のゆくえを捜します。

しかし、世界中のどこを捜しても見つかりませんでした。

 

ただ、種火が言うには ・・・

一か所だけ捜せない場所があると言います。

それは、暗黒の地の底だけは捜しに行けないと言いました。

 

火を操る男の子は、暗黒の地へと続く扉を開けると黒い階段を一歩一歩降りて行きました。

そして、種火を飛ばすと真っ暗で何も見えなかった景色が、薄暗くなり ・・・

捜していた赤い光玉が浮かび上がってきました。

 

火を操る男の子は、すかさず光玉を摑もうとしました。

しかし、目の前にあるのに、摑むことができませんでした。

何年たっても、男の子は戻って来ることはありませんでした。 

 

 

 

 

 

水を操る力を持つ男の子は ・・・

海の中に潜ると世界中を巡り回っている海流たちの声を聞きます。

そして、青い光玉が、七つの海を治める竜宮の国にあることを突きとめました。

 

竜宮の国は、光も届かない漆黒の深い深い海の底にありました。

水を操る男の子は、竜宮の国の門をくぐると驚きの光景を目にしました。

 

門の外とは大違い・・・

眩しくて目も開けられない程の輝きに満ち溢れていました。

 

捜していた青い光玉は、その輝きの中でも一層際立って輝いていました。

水を操る男の子は、青い光玉を摑もうとしました。

しかし、目の前にあるのに摑むことができませんでした。

何年たっても、男の子は戻って来ることはありませんでした。

 

 

 

 

綿津見の女神様は、悲しみました。

光に惑わされて、いつまでも戻って来ない三人の子を思って・・・

 

悲しみのあまり自然に流れ出す涙が・・・

淡い真珠色に輝き、青く美しい海に流れていきます。

 

淡い真珠の涙が・・・雪のように・・・

漆黒の深海に悲しみの雪となって降るようになりました。

 

 

 

 

~*~*~*~*~*~*~*~*~*~*~*~*~*~

 

 

 

 

「だから・・・北風大王の吹く冷たい風を感じると・・・

 悲しみの雪・・・パールスノーが静かに降る・・・」

ロッパが、長~い首を伸ばして黒く暗くなった海をみて・・・

 

「漆黒の深海にな・・・」

と、遠~いものを見るような眼差しで言いました。

 

「だから、光に近づくなと・・・」

スッキー魔が、北風大王の謎の言葉を思い出します。

 

「次に・・・光玉に出会ったのは・・・それから・・・

 気が遠くなるような・・・長~い年月が経った頃・・・」

ロッパが・・・

今まで、どれくらい長く生きてきたのか・・・?

ゆっくりと・・・遠い過去を思い出して話し始めました。

 

 

 

~~~~~~*~~~~~~*~~~~~~*~~~~~~

 

 

 

 

「ロッパ! 見て! 珊瑚礁のお花畑で宝物を見つけたの!」

アコヤガイのアイが、波間に揺れるイソギンチャクの間から

可愛い笑顔で嬉しそうに飛び出してきました。

 

アイの小さな手のひらの中には・・・

吸い込まれてしまいそうな魅惑の光玉が光り輝いていました。

 

その時・・・

ロッパは、妖しい魅力を放っている光玉を見て・・・

不吉な予感がしました。

 

 

それから暫くすると、アコヤガイのアイは ・・・

毎日、白い砂浜へ向かうようになりました。

気になったロッパは、アイに尋ねました。

何しに白い砂浜に行くのかと・・・?

 

するとアイは・・・

「探し物をしている少年と知り合ったの・・・」

と、嬉しそうに言いました。

 

 

ロッパは、その少年のことが気になりました。

そして、白い砂浜に、そーっと様子を見に行ってみました。

あっ!・・・目玉が飛び出るほどにロッパは、驚きました。

そこには ・・・

日の光を浴びて眩しいほどに光り輝いている、美しい少年がいました。

 

するとアイは・・・

珊瑚礁のお花畑で見つけた光玉を、その少年に渡していました。

毎日毎日、海の中を探して・・・

見つけると嬉しそうに、少年の待つ白い砂浜へ向かいます。

 

 

ある日・・・

元気のないアイの姿がありました。

ロッパは、気になってアイに尋ねました。

元気がないのは、なぜかと・・・?

 

するとアイは・・・

「少年が探していた物は、これが最後の一つなの・・・」

と、悲しそうに言いました。

 

ロッパは、少年が何で光玉を探しているのか気になりました。

そして、アイの後を、そーっと付けて行きました。

ロッパは、白い砂浜で夢幻の光景を目の当たりにしました。

 

アイが最後の光玉を少年の綺麗な手のひらに載せると・・・

夢か・・・幻か・・・不思議な光景が現れました。

 

バラバラだった光玉が一つに重なり・・・

光り輝きながら、七色の美しい首飾りになりました。

 

少年はアイに・・・

輝くような笑顔で、ありがとうと、嬉しそうにお礼を言いました。

そして・・・

ずっと・・・探していたんだよと・・・

 

ロッパは、嫌な予感がしました。

少年が探していたものが、七色の美しい首飾りとわかると・・・

 

 

あくる日・・・

思い詰めたアイの姿がありました。

ロッパは、心配になってアイに尋ねました。

何を考えているのかと・・・?

 

するとアイは・・・

白い砂浜ではなく、深い深い漆黒の深海へ潜って行きました。

 

そして、大きな声で・・・

「セイ! セイ! どこにいるの? 竜王! お願いがあるの!」

と、言いました。

 

すると・・・

漆黒の深海に、眠りを妨げるのは、誰だ・・・

と、竜王の低い太い声が響きます。

 

竜王が久しぶりに長~い眠りから目を覚ますと・・・

瞳をキラキラさせ頬を桃色に染めたアコヤガイの

小さな少女の輝くような笑顔がありました。

 

アイか・・・? どうした・・・?

と、竜王の優しい声が、静寂した深海に響きます。

 

するとアイは・・・

「海から出て、外の世界に行きたいの!」

と、竜王にお願いするのでした。

 

外に出たら・・・二度と海へは戻れない・・・

と、心配して反対する竜王に・・・

 

「かまわないわ!」

と、アイは必死で、お願いするのでした。

 

暫くすると・・・

元気いっぱいで、急いで戻って行くアイの姿と・・・

アイの熱意に負けた竜王の、曇った不安の顔がありました。

 

ロッパも、一途に思い詰めたアイのことが心配でした。

そして・・・

 

 

 

 

 

~~~~~~*~~~~~~*~~~~~~*~~~~~~

 

 

 

 

 

「どうなったんだよ!」

黙っているロッパに、スッキー魔が聞きます。

 

「所詮・・・叶わぬ恋だったんだよ・・・」

ロッパが、しんみりと言います。

 

「だから、どうなったんだよ!」

スッキー魔が、怒鳴りながら心配します。

 

「悲しみが ・・・恐怖を呼んだ・・・」

ロッパが、暗くなった空を見ながら・・・・思い出すように言いました。

 

 

 

~*~*~*~*~*~*~*~*~*~*~*~*~*~

 

 

 

 

 

 

白い砂浜に・・・

元気いっぱいに走って行くアイの姿がありました。

 

波が引いた砂浜に・・・

アイの足跡が、どこまでも続いています。

 

ロッパは、不安を感じてアイの残した足跡を追いました。

 

足跡の消えた先に・・・

波打ち際で佇んでいる、アイの寂しそうな姿がありました。

 

美しい光り輝くような少年の姿はありませんでした。

ロッパは、ゆっくり近づいて、アイに聞きました。

少年はどうしたのかと・・・?

 

すると・・・

アイの瞳から、大粒の涙が零れました。

 

アイが言うには・・・

少年は、幻だったと・・・

どういう事かと・・・?尋ねると・・・

 

少年が言うには・・・

長い間、この首飾りを探し続け・・・

待っている人がいると・・・

その人に届けなければいけないと・・・

 

アイは、必死で・・・

私も行くと、少年に抱きつきました。

しかし・・・

回した腕が、空を切り・・・

少年の体を通り抜けてしまいました。

 

アイは、驚いて振り向くと・・・

少年は、何も言わず優しく微笑んでアイを見つめていました。

 

アイは、悟りました。

この少年とは、決して触れ合うことはないことを・・・

 

 

 

~~~~~~*~~~~~~*~~~~~~*~~~~~~

 

 

 

 

 

 

 

「それからアイは・・・白い砂浜で、ずーっと泣いていた・・・

  前にも進めず・・・元にも戻れず・・・」

ロッパは、首を長く伸ばして、ふーっと大きなため息をつくと・・・

 

「そして、深い深い悲しみの余り ・・・

 心が凍りつき・・・氷の涙を流すようになった・・・」

と、また首を自慢の亀甲模様の甲羅の中にしまいながら・・・

 

「そして・・・悲しみが、恐ろしいものを生み出した・・・」

ロッパが、絞り出すような声で言いました。

 

「恐ろしいもの・・・あっ! まさか・・・?」

スッキー魔は、さっきの背筋が凍るような情景を思い出しました。

すると・・・

 

 

ウウウ・・・ どうして・・・

 

波の音に交ざって・・・

 

アアア・・・ 苦しい・・・ 切ない・・・

 

スッキー魔の耳に・・・

 

ウウウ・・・ 忘れていたのに・・・

 

不吉な呻き声と・・・

 

アアア・・・ どうして・・・思い出させるの・・・

 

恐ろしい声が聞こえてきました。

 

 

 

 

スッキー魔は・・・

また、冷や汗が垂れ、背筋が凍りつき一気に緊張します。

 

気が付くと・・・

さっきまで穏やかだった海が・・・

日が沈み、暗くなった海が・・・

真っ赤に燃えて、渦を巻いていました。

 

渦の中心に、赤い炎の目をした、真珠の少女がいるのが見えました。

少女は、淡い白い光玉の光に包まれて、妖しく光り輝いていました。

 

 

 

「恐ろしい・・・ どうして ・・・

  また、こんなことが・・・起こるとは・・・」

ロッパが、震える声で言います。

 

「赤い炎が・・・抑えても抑えきれない情熱が・・・

 氷の涙を解かす時・・・あいつが目を開ける・・・三つ目の目を・・・」

恐怖で顔を曇らせ、思い出したようにスッキー魔を見ました。

 

 

 

 

 五話 七色の魔法の光に導かれて・・・

      (希望の一粒の涙)前編へ・・・  続く・・・