パールスノーの伝説

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 清く果てしない海に ・・・

 

パールスノーと呼ばれる雪が降る時 ・・・

 

美しい真珠の花が咲くのを知っていますか?

 

 

 漆黒の静寂した空間に ・・・

 

淡く白い光を灯し ・・・

 

幻の花が咲くことを ・・・

 

 

 無常の風に海流が荒れ狂っても ・・・

 

深い悲しみを抱いて ・・・

 

誰にも ・・・知られることもなく ・・・

 

静かに美しい花を咲かせることを ・・・

 

 

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 おとうふ山の赤い楓や黄色の橅の葉が ・・・

爽やかなそよ風に揺られて ・・・

さわさわと葉風になびき、右へゆらゆら ・・・左へゆらゆら ・・・

葉越しに見える木漏れ日が ・・・

きらきらと輝きながら、右へゆらゆら ・・・左へゆらゆら ・・・

 

 

 その光が輝く上空で ・・・

  

 クルクル クルクル

 

何かを探しているように ・・・

 

 クルクル クルクル

 

あっちに行ったり ・・・こっちに来たり ・・・

 

 クルクル クルクル

 

爽やかなそよ風が、困ったように ・・・

 

 クルクル クルクル

 

右へ行ったり左へ来たり、うろうろしています。

 

 

 

 

 

「闇の扉は、そんなに簡単に開かないよ!」

 おとうふ山の上空に浮かぶ白い雲が近づいて来て話かけます。

 

「どうして ・・・?」

 

「火炎魔大王の許しがないと開かないんだ!」

その 雲の上で寝転んでいるスッキー魔が答えます。

 

「火炎魔大王 ・・・? あっ!あの炎の龍の事 ・・・?」

 ココは、ぶるっとして、恐ろしい竜王の顔を思い出します。

 

 

「じゃあ ・・・リリは、火炎魔大王の所にいるの ・・・?」

 

「違う! 多分 ・・・ゴズの所だ!」

雲の隙間から顔を出してスっキー魔が答えます。

 

「ゴズ?」

 

「闇の国の獄卒だよ!岩の牢を治めているんだ!」

 

「えっ! そんな所に ・・・」

 ココは、青ざめてリリを心配します。

そして、威勢よく叫びます。

 

「あなたのせいよ! 何とかして!」

 

「はぁ~? そっちが勝手に闇の扉の前にいたんだよ!」

雲の間から大きく体を伸ばして言い返します。

 

「何ですってーっ!」

 

「それより、助けてやったお礼を言って貰ってないけれど ・・・」

 

「まあ! ・・・ 」

ココが、真っ赤になって言い返そうとすると ・・・

 

 

 

 

 

突然! 北の方から ・・・

 

びゅうーーーっ! と ・・・

 

もの凄い突風が吹きました。

 

 

 

 

  グル グル  グル グル

 

ココは、何が起こったのか分からず ・・・

 

 グル グル  グル グル

 

大きな風の渦巻きにあおられ ・・・

 

 グル グル  グル グル

 

抵抗する間もなく ・・・

 

 グル グル  グル グル

 

 おとうふ山の上空から、飛ばされてしまいました。

そして ・・・ 白い大きな渦の中に消えていきました。

 

 

 

 

 

 

二話 白い真珠の魔法に魅せられて・・・(淡い初恋)

 どのぐらい気を失っていたのか ・・・?

気が付くと ・・・

美しい珊瑚礁のお花畑が広がる青い海と

七色に輝く砂浜にいました。

 

 

 

「どうしたの? 何が起こったの?」

 ココは、驚いてキョロキョロしてスッキー魔を捜します。

姿が見えません。

 

「スッキー魔!」

大きな声で叫びます。

 

 しかし ・・・

返事がありません。

ココは、耳を澄まし五感を働かせます。

えっ? ・・・感じない ・・・居ないわ ・・・

スッキー魔の気配が、どこにもありませんでした。

 

「どうして ・・・?

 ココは、スッキー魔が居なくて不安を感じている自分に驚いていました。

 

 

 

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 ユラ ユラ  ユラ ユラ

 

長~い ・・・たくさんの手を伸ばして ・・・

 

 ユラ ユラ  ユラ ユラ

 

美しい花を咲かせながら ・・・

 

 ユラ ユラ  ユラ ユラ

 

ツリガネクラゲやハナガサクラゲが ・・・

 

 ユラ ユラ  ユラ ユラ

 

珊瑚礁のお花畑の上を漂っています。

 

 

 

 

 

 

 その美しい珊瑚礁のお花畑で ・・・

ドット模様のミズタマサンゴの間から、赤と白と桃色のストライプがとっても魅力的なエビのモモが顔を出してキョロキョロしています。

 

 

 赤い珊瑚が大好きな、ピンクのお目々が可愛いハゼのゼナも、大きな瞳をパチパチさせています。

 

 先っぽが膨らんでいる丸い形のサンゴイソギンチャクの間に、いつも隠れているクマノミのチークは、珊瑚礁のお花畑の用心棒です。敵が現れると飛び出して驚かせます。

そのチークも、じーっとして様子を伺っています。

 

 

 

 すると ・・・

 

 カタ カタ  カタ カタ

 

珊瑚礁のお花畑の片隅で ・・・

 

 カタ カタ  カタ カタ

 

美しい白い貝殻が、小さな音をたてています。

 

 カタ カタ  カタ カタ

 

暫くすると ・・・周りの様子を伺いながら ・・・

 

 カタ カタ カタ カタ

 

中から、淡い白色の小さな少女が現れました。

 

 

 

 

 少女は、貝殻から抜け出すと ・・・

上手に泳いで、七色の砂浜を目指します。

 

 慌てて、クマノミのチークが追いかけます。

「アコ! 待って! 竜王に怒られるよ!」

 

「大丈夫! 心配しないで、分かっているから ・・・」

 

 

 そう ・・・分かっている ・・・

見ているだけ ・・・輝くような笑顔を ・・・

見ていたいだけ ・・・

 

 

 

 

 

 

 

 日の光を浴びて、海面が金色に輝いています。

細波が光を散らし、きらきら揺れています。

 

 その輝きを背に、白い小さな少女が青く深い海の底を目指して潜って行きます。

細長いオビクラゲが、驚いたように透明な帯を揺らして見守ります。

 

 少女は、ぐんぐん ぐんぐん潜って

光の届かない深海まで来ると、大きな声で叫びます。

 

「セイ! セイ! どこに居るの? 竜王! お願いがあるの!」 と ・・・

 

 

 すると ・・・漆黒の深海に低い太い声が響きます。

「眠りを妨げるのは ・・・誰だ ・・・」

 

「ごめんなさい! セイ、起こしちゃって ・・・」

弾んだ少女の声が響きます。

 

「アコか ・・・?」

優しい声が、響きます。

 

 

 竜王が、久しぶりに長~い眠りから目を覚ますと ・・・

瞳をキラキラさせて、頬を桃色に染めたアコヤガイの小さな少女の輝くような笑顔がありました。

 

 竜王の眉間に皺が寄ります。

輝くような少女の笑顔とは正反対に、竜王の顔が曇ります。

 

「セイ! お願いがあるの ・・・」 

と、 言をうとしたら ・・・

 

「ダメだ!」

竜王の、低い声が遮ります。

 

「どうして ・・・? まだ、何も言ってない ・・・」

少女の声に驚きと不安が交ざります。

 

 

 すると ・・・

諭すような竜王の優しい声が、静かな深海に響きます。

 

「分かる ・・・皆同じだ! 良く聞きなさい。

  海のものは、海でしか生きられない。

  どんなに望んでも、決して光と触れ合うことはない ・・・」

 

「どうして ・・・?」

少女は、竜王の言葉の意味が分かりませんでした。

 

 

「いずれ分かる ・・・辛いだけだ!」

 

 暗い光の届かない深海に ・・・

竜王の深い悲しみをおびた低い重たい声が響きます。

 

 そして ・・・呼んでも、叫んでも ・・・

それっきり ・・・竜王からは、返事がありませんでした。

 

 

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 サラ サラ  サラ サラ

 

美しい七色の砂が ・・・

 

 サラ サラ  サラ サラ

 

細い綺麗な指の間からこぼれます。

 

 サラ サラ  サラ サラ

 

波打ち際で、途方に暮れている ・・・

 

 サラ サラ  サラ サラ

 

ココの指の間からこぼれます。

 

 

 

 

 

 フフフ ・・・ 

 

すると、暖かい南の風に乗って ・・・

 

 ラララ ・・・

 

明るい笑い声と歌声が聞こえてきました。

 

 フフフ ・・・

 

コは、美しい声に誘われて ・・・

 

 ラララ ・・・

 

歌声の聞こえる方へ向かいます。

 

 

 

 

 フフフ ・・・  ラララ ・・・

明るい笑い声の主を見て ・・・ 

 

「あっ!」

ココは、驚きの声をあげます。

 

 

 フフフ ・・・  ラララ ・・・ 

きらきらと輝く七色の砂浜で ・・・

白い光に包まれて ・・・

 

 フフフ ・・・  ラララ ・・・

純白に輝いた真珠の少女が ・・・

無邪気に波と戯れ、楽しそうにはしゃいでいました。

 

 

 しばし ・・・ココは、神秘的な光景に目を奪われます。

 

 

 

 

 

 

 

 すると ・・・

遠くの方から、賑やかな声が聞こえてきました。

大きな元気な声です。

 

その声が、だんだん だんだん近づいてきます。

 

 

 真珠の少女は、その声に気が付くと ・・・

慌てて岩場の影に隠れます。

そして ・・・ 賑やかな声の中の一人 ・・・

笑顔が素敵な元気な声の少年を、キラキラした瞳で見つめていました。

 

 

 ココは、その様子を微笑ましく見つめます。

次の日も、その次の日も ・・・

来る日も、来る日も真珠の少女は少年が来るのを待って

岩場の影から少年を見つめています。

 

 

 

 ココは、真珠の少女のけなげな気持ちに打たれて ・・・

胸が切なく苦しくなりました。

 

 そして、ある日 ・・・

少女の気持ちを、ちょっとだけ後押しをしてあげようと思い

ふわ~っ と魔法のウエーブを作り、少女に向かって投げようとしました。

 

 すると ・・・

 

「やめろーっ!」

頭の中に、突然声が響きました。

ココは、びっくりして驚きます。

 

「えっ? スッキー魔 ・・・?」

今まで気配がなかったのに、ココは戸惑います。

 

 

「お節介はやめろ! ここは、白い魔法の世界だ!」

頭の中で、びんびん響きます。

 

 

「どういう事 ・・・? スッキー魔! どこにいるの ・・・?」 

声がするけれど ・・・姿が見えません。

 

 

「運命を変えてはいけない ・・・」 

 

 

「スッキー魔 ?」

ココは、不安になります。

 

 

 しかし ・・・

ココの作り出した光の国の魔法の風は ・・・

 

 この白い世界では、ココの想像以上に威力があり

ココが戸惑っている間に手を離れて ・・・

光のウエーブとなり、真珠の少女に向かいます。

 

 そして ・・・

ふわ~っ と ・・・ 魔法の風が舞い上がると ・・・

真珠の少女の体が浮き上がり、岩場の影から飛び出してしまいました。

 

 

 

 

 小さな白い真珠は、魔法の光を浴びて

眩いばかりの輝きを放ちます。

 

 

 少年が、その輝きに気が付きます。

そして、小さな真珠を拾うと ・・・

 

「早く、早く! 学校に遅れちゃうわーっ!」

明るい元気な声のする方へ走って行きました。

 

 

 

 ココは、その様子を見て ・・・

戸惑いと不安で胸がいっぱいでした。

 

 

 困っていると ・・・

 

 ユラ ユラ  ユラ ユラ

 

目の前の空間が揺れ始めました。

 

 ユラ ユラ  ユラ ユラ

 

ココは、びっくりして緊張します。

 

 ユラ ユラ  ユラ ユラ

 

眩しい光と共に、冷たい風が吹き始めました。

 

 ユラ ユラ  ユラ ユラ

 

恐怖のあまり、ココは口を開けたまま動けずにいます。

 

 すると ・・・

スッキー魔のとぼけた顔が、突然目の前に現れました。

 

 

 

 

「きゃーっ!」

驚きの悲鳴を上げると共に ・・・ 

 

 ココは、そのとぼけた顔を見て気持ちが緩み、

ほっとして自然に涙が溢れてきました。

 

 

 

 

三話 赤い炎の魔法が燃える時 ・・・

 

       (儚い夢の幻)へ ・・・ 続く ・・・