パールスノーの伝説

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 赤く燃える夕日の海で ・・・

 

淡い白い真珠の花が ・・・

 

氷の涙を流すのを知っていますか ?

 

決して交わる事のない憧れを抱いて ・・・

 

届かぬ思いの悲しみを知って ・・・

 

一人 ・・・ 静かに ・・・

 

誰にも知られることもなく ・・・

 

氷の涙を流すことを ・・・

 

 

 

  

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三話 赤い炎の魔法が燃える時・・・

(儚い夢の幻)

 グウー  スウー

 

心地よい風が吹く ・・・

 

 ガアー   スウー

 

静かな午後の一時を ・・・

 

 グウー ガアー  グウー スウー

 

邪魔するかのように ・・・

 

 グウー ガアー  グウー スウー

 

大きな鼾(いびき)と寝息が響きます。

 

 

 

 

「サミー! 怒られるよ!」

ミロロが小声で、サミーを起こします。

しかし、完全に寝ていて起きません。

 

「珍しいな! 授業中に寝たことなんて、ないのに・・・?」

カタンが、心配して言います。

 

「どうしたのかしら? 修行が大変なのかしら ・・・?」

マチバも、心配します。

 

「まさかり頭領は、厳しいからな!」

ヌッキーが、サミーを揺らして起こそうとすると ・・・

 

「おしゃべりはしない! 集中しなさい!」

ハッサミーナ先生の大きなお叱りの声が、教室中に響きます。

 

「やばい! 早く起きろ!」

サミーを揺らします。

 

しかし ・・・

 

グウー  ガアー ・・・

 

サミーの大きな鼾が、教室中に響き渡ってしまいました。

 

「こらーっ! 寝てるのは、誰だーっ!」

 

サミーが目を覚まして、寝ぼけ混じりの顔を上げると ・・・

真っ赤になって怒っている、八サミーナ先生の顔が目の前にありました。

 

うわーっ! や ば い ・・・

 

 

 

 

 

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 ザブ~ン サラサラサラ ・・・

 

美しいエメラルドグリーンの海と 

 

 ザブ~ン サラサラサラ ・・・

 

七色に輝いている砂浜を 

 

 ザブ~ン サラサラサラ ・・・

 

困ったように見つめている 

 

 ザブ~ン サラサラサラ ・・・

 

北風大王の子分のスッキー魔の姿があります。

 

 

 

 

「どこに居るんだ ・・・」

スッキー魔が、つぶやきます。

 

「どこの時代に居るんだ ・・・ふうーっ ・・・」

大きなため息をつきながら、手に握り締めているものを見ます。

 

じーっと見ていると、吸い込まれてしまいそうな美しく魅惑に輝いた光の宝玉です。

 

「スッキー魔! これを ・・・ きっと役にたつよ ・・・」

光の国の声の妖精ボイスの言葉を思い出します。

 

「ボイス ・・・」

 

 

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 おとうふ山の上空で、奇妙な縁で巡り逢った光の国の妖精達。

偶然なのか ・・・? 運命なのか ・・・?

その中の一人、そよ風の妖精ココが何となく気になって ・・・

何だかんだと言って、からかっていると ・・・

 

突然!大きな突風が吹きました。

油断していたスッキー魔は、風にあおられて、

乗っていた雲と一緒に飛ばされてしまいました。

 

必死に雲に、しがみついていると ・・・

 

「ばか者! 何をしている ・・・」

えっ? どこかで聞き覚えのある声が ・・・

 

「いつまでも ・・・帰って来ないで何をしている ・・・」

おっ! まさか ・・・?

 

「まさかじゃない! 忘れたか ・・・?」

忘れるはずがない ・・・

 

「何をしている ・・・?」

何を、と言われても ・・・

 

「近づくな ・・・」

えっ ・・・?

 

「光に近づくな ・・・ 深入りするな ・・・

・・・?

 

「分かったか!」

なぜ ・・・?

 

 

「大王!北風大王! どうして ・・・?」

スッキー魔が、問い掛けても ・・・もう、返事はありませんでした。 

 

 

 

 

 

 

 訳が分からず、ポカ~ンとしているスッキー魔の頭の中に ・・・

 

「大変だ! 渦に巻き込まれる!」

ボイスの声が響きます。

 

 振り向くと ・・・

突風にあおられたココが、大きな白い渦の中に飲み込まれて行くのが見えました。

 

「あっ! 白い魔法の世界に引き込まれる ・・・」

すかさず、スッキー魔はココの後を追いかけます。

 

 すると、ボイスが ・・・

「スッキー魔! これを ・・・ きっと役に立つよ!」

ボイスの大事にしている光の玉を投げてくれました。

 

スッキー魔は、それを掴むと一気に白い渦へ向かいます。

頭の中に、北風大王の言葉が浮かびます。

 

近づくな ・・・ 深入りするな ・・・

 

 しかし ・・・

スッキー魔は、少しの躊躇(ちゅうちょ)もなく白い魔法の渦の中に飛び込んで行きました。

 

 

 

 

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 ラララ ・・・

 

 暗闇の中に ・・・

淡い白い光が浮かび上がります。

 

 ラララ ・・・

 

 静寂した空間に ・・・

美しい歌声が流れます。

 

 ラララ ・・・

 

 

 

 

 ザブ~ン  サラサラサラ ・・・

 

サミーは、気がつくと ・・・

 

 ザブ~ン  サラサラサラ ・・・

 

七色に輝く砂浜にいました。

 

 ザブ~ン  サラサラサラ ・・・

 

光輝く白い光に包まれて ・・・

 

 ザブ~ン  サラサラサラ ・・・

 

小さな真珠の少女が、波と戯れています。

 

 

 

 

 

 

 ラララ ・・・

 

真珠の少女が、サミーに気がつくと ・・・

 

 ラララ ・・・

 

嬉しそうに可愛い笑顔で、手招きします。

 

 ラララ ・・・

 

「こっち ・・・こっちよ ・・・」

 

 ラララ ・・・

 

 

 

 

 

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「サミーの番よ!」

頬杖をついて、ウトウトしているサミーに ・・・

 

「ぼんやりしてないの! 速くカットよ!」

ミロロの元気な声が、サミーを促します。

 

 

「あっ! ごめん ・・・」

そう言うと、慌ててカタンの糸をカットします。

しかし ・・・ カットした糸の先っぽがギザギザです。

 

「サミー! どうしたの? こんなんじゃ、針の穴に通らないよ!」

カタンが驚いて、心配します。

 

「まあ! 鋏の歯がボロボロよ!」

マチバも、びっくりして言います。

 

「何の修行してんだよ! さぼってんのか?」

ヌッキーに、どやされます。

 

 

 みんなに文句を言われてサミーは、落ち込みます。

まさかり頭領の修行は厳しくても、一日も休んだことはなかったのです。

どうして ・・・?

 

 

 

 

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 ラララ ・・・

 

 暗闇の中に ・・・

淡い白い光が浮かび上がります。

 

 ラララ ・・・

 

 静寂した空間に ・・・

美しい歌声が流れます。

 

 ラララ ・・・

 

 

 

 

 ユラ ユラ  ユラ ユラ

 

サミーは、ふと ・・・ 気がつくと ・・・

 

 ユラ ユラ  ユラ ユラ

 

美しい珊瑚礁のお花畑が広がる ・・・

 

 ユラ ユラ  ユラ ユラ

 

透き通った青い海の中を ・・・

 

 ユラ ユラ  ユラ ユラ

 

クラゲと一緒に、ゆらゆらと浮いていました。

 

 

 

 ラララ ・・・

 

「こっち ・・・ こっちよ ・・・ 」

 

 ラララ ・・・

 

真珠の少女が、微笑みながらサミーの手を取ります。

 

 ラララ ・・・

 

二人は、どこまでも続く ・・・珊瑚礁のお花畑の中に ・・・

 

 ラララ ・・・

 

 

 

 

 

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「あっ! シュンソク ・・・? どうしたの?」

ミロロが、シュンソクを見て驚きます。

 

「まあ! 珍しいわね」

マチバも、驚いた顔をしています。

 

 

履物一族の地下足袋のシュンソクは、滅多に教室には来ません。

スポーツや走り回るのが大好きなシュンソクは、サミーが帰る時まで、いつも運動場を駆け回っているのです。

 

「サミーは ・・・?」

まだ来ていないサミーを心配して、カタンが聞きます。

 

「寝坊かーっ? あいつ最近たるんでるよなー!」

ヌッキーも、大きな声で怒鳴ります。。

 

いつも明るいシュンソクが、珍しく元気がありません。

 

「どうしたの?」

ミロロが、もう一度心配して聞きます。

 

「病気なんだ!」

 

「えっ! 誰が ?」

マチバが、驚いて聞き直します。

 

「サミーが、病気なんだ!」

 

「まさかー? あいつが病気したのなんか、見たことがない!」

ヌッキーが驚きの声を上げます。

 

「まさかり頭領も、心配してたよ」

 

「何の病気 ・・・?」

カタンが、心配顔で聞きます。

 

「錆(さび)が、発生したんだ!」

 

「えーっ!」

みんな驚いて顔を見合わせます。

 

「それも、体全身なんだ! 突然発生してボロボロだそうだよ!」

 

「どうして ・・・?」

みんなが、声を揃えて心配して聞きます。

 

「分からない。 頭領も不思議だって言ってた。

 だけど、少し気になることがあるんだ!

 だから ・・・作って欲しいものがあるんだけど、いいかな?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 青く美しい海の珊瑚礁のお花畑で ・・・ 

 

 

  プワン プワン  プヨ プヨ

 

桃色や黄色の丸い膨らみが可愛い ・・・

 

 プワン プワン   プヨ プヨ

 

サンゴイソギンチャクの群れが ・・・

 

 プワン プワン  プヨ  プヨ

 

押し合いへし合い ・・・

 

 プワン プワン  プヨ プヨ

 

おしくらまんじゅうをしています。

 

 

 

 

 キョロ キョロ  キョロ キョロ

 

その隙間から ・・・

 

 キョロ キョロ  キョロ キョロ

 

びっくりした様子で ・・・

 

 キョロ キョロ  キョロ キョロ

 

大きな目玉が ・・・

 

 キョロ キョロ  キョロ キョロ

 

あるものを追い掛けています。 

 

 

 

 

 

 

 珊瑚礁のお花畑の用心棒のクマノミのチークは、

多くの外敵から、お花畑を守ってきました。

最大の敵の大ヒトデも、不気味な姿をしているし ・・・

広~い海の中には、変わった姿をした奴がたくさんいるのです。

 

しかし ・・・

こんな変な奴は、初めて見たのです。

よ~く観察していると ・・・

 

泳ぎは、まーまーか?

息継ぎも、まずまずかな ・・・

スタイルは、まあ~俺の方がちょっといいかな ・・・

う~ん? 変わった鱗だな~? なんだ~?

えーっ! 布? ・・・?

 

 

 すると ・・・

黄色いドット模様のスナイソギンチャクの間から、

赤 ・白 ・桃色のストライプが魅力的なエビのモモが可愛い顔を出しました。

そして ・・・

 

「ねえ! あなた見かけない顔ね! 泳げるの ・・・?」

好奇心旺盛な瞳で、変な奴に声を掛けてみました。

 

「もちろん! 泳げるよ。 泳ぎは得意なんだ!

 本当は、走る方が得意だけど ・・・」

 

 

 すると、今度は ・・・

 ピンクのお目々が可愛いハゼのゼナが、

アカサンゴとイシサンゴの間から飛び出してきて ・・・

 

「まあ! 泳ぐの得意なの? 私もよ!

 何か探してるの? 泳げるなら、海の中を案内するわ!」

と、嬉しそうに丸いお目々でウインクしました。

 

 

「鋏の少年のことを知りたいんだ!

 何か、知っているかな?」

 

「知っているわ。 ついて来て!

 でも、その尾びれで大丈夫 ・・・・?」

ゼナが、心配します。

 

「心配いらない! この尾びれは、

 仲間が心を込めて作ってくれたものだから!」

 

尾びれを付けて、地下足袋魚になったシュンソクは、力強く言いました。

 

 

 

 

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 ザブ~ン  サラサラサラ ・・・

 

美しい七色の海岸に ・・・

 

 ザブ~ン  サラサラサラ ・・・

 

波の音が、絶え間なく聞こえてきます。

 

 ザブ~ン  サラサラサラ ・・・

 

宝玉を見つめているスッキー魔の耳に ・・・

 

 ザブ~ン  サラサラサラ ・・・

 

波の音に交って、歌声が聞こえてきます。

 

 

 

 

 

 ラララ ・・・

 

スッキー魔が、気が付いて歌声のする方を見ます。

 

 ラララ ・・・

 

白い光に包まて、真珠の少女が波と戯れているのが見えました。

 

 ラララ ・・・

 

可愛らしい後姿に、スッキー魔は微笑みます

 

 ラララ ・・・

 

少女が、ゆっくりと振り向きます。

 

 ラララ ・・・

 

あっ! スッキー魔は、おもわず絶句します。

 

 

 

 

振り向いた少女の目が、赤い炎で燃えているように見えたのです。

驚いているスッキー魔の耳に ・・・

 

 

 

 

 忘れていたのに ・・・  どうして ・・・

 

  思いを断ち切った ・・・ はずなのに ・・・

 

 どうして ・・・  思い出させるの ・・・

 

     苦しい ・・・    切ない ・・・

 

    どうして ・・・

 

  

 

 

 

 そして、気が付くと ・・・

いつも穏やかな、青く美しいエメラルドグリーンの海が ・・・

夕日で真っ赤に染まり、炎のように燃えあがっていました。

 

 

 その真っ赤な炎の中に ・・・

全身が赤く、腕が六本、目が三つの愛欲の女神 ・・・

愛染明王が、ゆらゆらと揺れていました。

 

 

 

 

 四話 輝く光の魔法に憧れて ・・・

        (氷の涙が解ける時) へ ・・・続く ・・・