時代の節目に・・・

    

     古来、日本人は人生の節目に着物を纏う習わしがあります。

 

    お宮参りに始まり、七五三・成人式など・・・

 

    人生の節目に、祝い着を身に付けます。

 

 

     人生の前半は、親が子の成長を祝い着物を身繕います。

 

    しかし、人生も後半に差し掛かると、変わってきます。

 

    還暦の御祝いに、赤いちゃんちゃんこを子が親の為に用意するなど・・・

 

    微笑ましいエピソードを、よく耳にします。

 

 

     平成最後の夏が終わり、初秋を迎えた頃・・・

 

    ひいき筋の呉服屋さんから、急ぎの依頼がありました。

 

    「白いちゃんちゃんこを作ってほしい」と・・・

 

    白いちゃんちゃんこ・・・? ん・・・?

 

    話が進むうちに、ようやく理解出来・・・

 

    驚きから感動に心が移っていきました。

 

   

     呉服屋さんの話によると・・・

 

    ある日、見知らぬご老人の方が1人で訪ねて来たそうです。

 

    しっかりした足どりで・・・

 

    そして、はっきりとした言葉で・・・

 

    「白寿の御祝いに、白いちゃんちゃんこを作ってほしい」と・・・

 

    

     その方は、ご自身の九九歳の白寿のお誕生日に着る為に・・・

 

    なんと、ご自身で白いちゃんちゃんこを買いに来たのです。

 

    びっくりです。

 

 

     当初その方は、「生地は何でもいい。あるものでいい。」と・・・

 

    胴裏が、白くて照りがあるから、それでもいいと言っていました。

 

    しかし、せっかくの御祝いなので、何とかならないかなと思っていました。

 

  

     暫くして、呉服屋さんから嬉しい連絡が有りました。

 

    いろいろ当ってみたら、正絹の白いちゃんちゃんこが有ったそうです。

 

    私は、感動しました。

 

    想定して、白いちゃんちゃんこを作っていてくれた方達が居たことを・・・

 

    ありがとう。

 

 

     そのご老人の方も、とっても喜んでくれたそうです。

 

    平成時代の終わりに白寿を迎え・・・

 

    新しい時代に百歳を迎える思いは、どんな心境なのでしょうか・・・?

 

    時代の節目に、何を思うのでしょうか・・・?

 

 

 

                         美絽絽